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2004.07.29 ■ユーザーがSEを見る目は厳しくなっている

 Webサイトは,物販により利益を直接上げたり,企業の営業チャネルの一つになるなど,企業活動に欠かせない存在になっている。実際,Webサイト担当者の多くは「Webサイトなしでの営業(販売)活動は考えられない」と口をそろえる。こうなると,経営層も投じた費用に対し,Webサイトがどれだけ売り上げに貢献しているのかをきちんと把握したくなるはず。

 そういった思いから日経システム構築8月号で「システム投資の死角」という特集を執筆した。ユーザー企業がどのようにWebサイトの投資対効果を測っているのかを取材し,投資対効果を測る上で必要な「指標の設定方法」や「より効果を高めるための問題点のあぶり出し方」などをまとめた記事である。

 この取材を進めているうち,少し気になるキーワードを様々な取材先で伺った。それは,「ユーザーがSEを見る目はより厳しくなっている」ということである。ここでは,このキーワードについて書かせていただきたい(Webサイトの投資対効果の測り方については,上記の特集を参照いただければ幸いである)。

 取材に対応いただいたのは,主にユーザー企業のマーケティングや営業といった立場の方々である。これらWebサイト担当者がSE(自社の情報システム部門の場合もある)に対して何を感じているか,また,問題を解決するためにどんな試みを始めているか,をお伝えしたい。

「コスト意識だけは高いがビジネスの話ができない」

 まずは,システムの「効果」に対するユーザーとSEとの間の意識のずれである。例えば,あるマンション・デベロッパーのWebサイト担当者は「情報システム部門は,『そのシステムならこれだけの工数とコストがかかる』という話はできる。しかし,こちらが求めている効果を,そのシステムでどれだけ得られるのか,といった話ができない」と語ってくれた。

 「それはユーザーの仕事でしょう」というご意見もあるかもしれない。だが,サイトを担当するマーケティングや営業担当者は,システムの作り手に対して,コストだけでなくそのシステムがもたらす効果についてもユーザーと一緒になって考えてくれることを求めているのだ。

 ビジネスとシステムが直結すると,システム変更などの対応にも迅速さが求められてくる。利用者が社員ではなく顧客になるからだ。問題点を早くつぶさなければ,顧客にそっぽを向かれかねない。このため,Webシステムに対する“スピード感”は社内システムのそれよりも厳しくなる。にもかかわらず「情報システム部門にWebサイトの修正や機能追加をお願いしても,対応が遅い。そのため,Webサイトの運営には社外のホスティング・サービスを利用し,柔軟に改善できるようにしなければならない」(ある金融会社のWebサイト担当者)と嘆く。

 SEに対し,よりユーザー視点を求める声もあった。「SEは効率を求めがち。しかし,Webサイトを訪れるエンドユーザーのニーズを満足させるには,必ずしもシステム的に効率的なことがよいとは限らない」(あるメーカーのWebサイト担当者)。この会社では,ときにユーザーが求める“システム的には非効率”な機能を作ってもらうために,日ごろからSEと戦っていると言う。

ユーザーとSEの間でよりよい関係を作るために

 このようなユーザーとSEとの関係を見直してよりよいものにしていくために,2つの側面から取り組んでいる例を紹介しよう。一つはSEの意識改革,もう一つはWebサイトの運営体制の改革である。

 社内のSEの意識を変えようとしている企業の例がJTBだ。同社では,SEに対し,システム化する金額はいくらかはもちろん,売り上げがどのくらいになるのかなどを含めた「システム投資チェックリスト」を作成することを義務付けている。「こういった文書を作成するためには,システムに加え,営業などビジネスに関する知識も求められる」(事業創造部 システムインテグレーション室 室長補佐 田島義久氏)。

 Webサイトに対してダウン・タイムやレスポンス・タイムなどのサービス・レベルを社内的に設定し,その達成度合いがSEの給与に反映されるというネット専業企業もある。こうなると,システムの改善スピードを高める努力をしないわけにはいかない。

 情報システム部門の体制改革でユーザーの厳しい要求に応えているのがINAXだ。同社では,Webサイトの改善スピードを早めるWebサイト担当者の要求に応えるため,情報システム部門で人を動かしやすいような組織作りを実施している。

 一歩進めて,Webサイトを運営する部門に,SEも配置している企業がリコーや三菱電機である。「営業などの担当者が企画した要件をSEが単に実装する,という『バケツ・リレー方式』では,各自が自分のことだけしか考えなくなる。これでは良いWebサイトは作れない」(リコー 販売事業本部 e-ビジネスセンター ネットリコー推進室 室長 花井厚氏)。Webサイト担当者(営業/マーケティング)とSEが近くにいることで,問題意識を共有できるし,SEはWebサイト担当者が望む効果を身近に感じられるというわけである。

 顧客数や売り上げの増減がはっきり見えやすいWebサイトが,企業にとって欠かせない存在になるにつれ,ユーザーがSEを見る目はますます厳しくなってきた。裏を返せば,それだけSEへの期待が高まっているわけだ。SEにとってはチャンスでもある。

(吉田 晃=日経システム構築)


2004.07.16

■PDAは消えるのか(下)国内勢、法人に的――外資は低価格品、個人市場に攻勢

 一見活気のない店頭でも、ソニーの「クリエ」、シャープの「ザウルス」は新製品が並ぶと在庫切れを起こす。根強い固定客に支えられるものの、新規顧客を開拓できていないのが現状だ。2社のほかに東芝、NTTドコモなどの製品が並ぶが、商品数も少なく、手にとる消費者はほとんど見当たらない。

 店頭での販売不振の間げきをぬい、日本ヒューレット・パッカード(HP)が直販サイトでの販売を始めて販売台数を急増。03年1―3月期のシェアは約1%にとどまっていたが、04年同期には一気に11%まで伸びた。シェアの順位もカシオ計算機を抜いて3位に躍進した。

 HP製品は安価な約2万円台の機種が売れ筋。デルも3月に、3万―4万円前後の低価格機の国内販売を始めた。急激にしぼむ個人市場のなかで、外資勢はお家芸の価格攻勢に出る。

 ピークの翌年にあたる2002年、PDAの国内市場は前年比21%減といきなり縮小した。焦ったPDAメーカーは法人市場開拓に一気に傾く。カシオ計算機は個人向け仕様の機種開発を中止、NECも子会社に事業移管した。富士通も法人向け販売にカジを切る。

 2004年の市場予測では全体で0.1%減と横ばいで推移するが、店頭は2.2%減、法人向けが5.4%増。外資系の低価格攻勢を受け、国内メーカーの生き残り策は法人市場の開拓に限られる。

 企業でのPDAの使われ方は様々だ。カシオは流通・小売業向けにPDAを売り出し、安定した需要を獲得している。富士通が今月中旬に発売するデジタルカメラ内蔵のPDAは無線LAN(構内情報通信網)も搭載し、工事現場などの現場写真を撮ってリアルタイムで本部に報告するといった利用を想定する。

 「PDAメーカーの生き残り策は二つしかない」とガートナー ジャパン(東京・目黒)の蒔田佳苗アナリストは分析する。法人に的を絞った商品開発に特化するか、会話やデータ転送しやすいよう通信機能を強化した「スマートフォン」と呼ぶ高機能な携帯電話の領域に歩み寄るか――。ただ、国内では携帯電話の高機能化が進んでおり、スマートフォン化は得策にはならない。

 意外にも、PDAは博物館や博覧会などの分野でも活躍の場を広げている。京都の著名寺院、清水寺はシャープの「ザウルス」を使った境内案内サービスを6月に開始した。英語、韓国語、中国語にも対応した「観光案内コース」など3種類のコースを盛り込み、1台500円のレンタル料で貸し出し好評だ。

 PDAはどう生き残るのか。携帯電話という脅威にさらされ、法人市場に逃げ込む国内PDAメーカー。存在意義を定義し直せない限り、攻めの姿勢は取れない。

(この連載は森園泰寛、高橋里奈が担当した)

[日経産業新聞]


2004.07.15

■PDAは消えるのか(上)携帯電話に白旗?――高機能化も裏目、ソニー海外「撤退」

 携帯情報端末(PDA)の落ち込みが激しい。国内市場はピーク時の半分近くに縮小、なお減り続けている。携帯電話の多機能化で、最大の売り物だったスケジュール管理機能という特徴が薄れ、競争力が低下した。PDAは、パソコンの普及とともに市場が消えたワープロと同じ運命をたどるのだろうか。

 今年のクリスマスは新製品をお願いしません――。例年なら年末の商品戦略を説明する今の時期。米国では、ソニーの営業マンが訪れた販売代理店や大手小売店で、PDA「クリエ」について、こう説明して回っている。

 ソニーは今年末から米国に加え、欧州やアジアなど日本を除く全地域で「クリエ」の新製品の販売を中止することを決めた。デジタルカメラ機能、映像・音声再生機能などを盛り込んだ600ドル前後の機種を販売していたが、海外市場で300―400ドルの低価格機が主流となり採算が悪化したことが原因とみられる。

 2000年9月に海外へ「クリエ」を投入し、4年あまりでの事実上の撤退になる。全世界的にPDA市場が低迷するなか、「ソニーの海外撤退は理にかなっている」と販売代理店は一様に理解を示す。海外市場で約1割強のシェアを抱え業界3位となるソニーの決断は、PDAの行く末に疑問を投げかける。

 03年のPDA世界市場は前年比5.4%減の約1144万台。一方、国内市場の落ち込みはさらに厳しい。01年のピークを境に年間に21―26.5%減少している。04年には最盛期の半分近くになる公算が大きい。

 PDAが日本にお目見えしたのは、日本IBMが1999年に基本ソフト(OS)「パーム」を採用して発売した商品「ワークパッド」。パソコンや手帳代わりとしての用途が見込まれ、ビジネスマンだけでなく一般消費者も購入した。ソニーを含め、富士通、NEC、カシオ計算機など国内メーカーも11社、PDA市場に参入した。

 ただ、ネット接続サービスを持つ携帯電話やノート型パソコンの軽量化に伴い、勢いづくとみられたPDAの存在は急速に薄れる。

 「PDAは死につつある」。携帯電話向けOSを開発・販売する英シンビアンのデビッド・レビン最高経営責任者(CEO)は、6月に来日した際にPDA衰退論を披露した。携帯電話がPDAの持つ機能を兼ねるようになり、「やがてPDAは消滅する」と辛らつだ。

 ソニーの木村敬治・執行役専務も「個人情報を管理する道具としてのPDAの使命は終わった」と認める。アドレス、スケジュール管理だけでは限界があり、デジカメ搭載、動画再生、ゲームなどPDAに新たな役割を追い求めた。海外においては、その高機能化が裏目に出た。

 唯一、新製品を発売し続ける日本でのソニーのシェアは32%(2003年)。「トップの地位を固める」としているものの、明確な戦略を描いているわけではない。

 PDAは米アップルコンピュータが93年に販売した商品「ニュートン」が始まり。誕生からちょうど10年が過ぎ、業界そのものが岐路に立たされる。海外では世界最大手、米パームが昨年に競合メーカーを買収、より携帯電話に近い「スマートフォン」の開発に動くなど需要回復に向けて新たな波もある。

 一方、急激にしぼむ国内市場。復活するか、黙って消滅の道を選ぶのか。まさに瀬戸際を迎えている。

[日経産業新聞]


■情報化社会:
2つの白書でみる世界最先端ニッポンの姿


 今年の政府の情報通信白書とインプレスが発表するインターネット白書(インターネット協会監修)がこのほど相次いで発行された。調査対象が違うことから数値にズレはあるが、世界最先端といわれる情報社会ニッポンがどうなっているのか、おおよその傾向はつかめる。2つの白書を通じて、日本の実情を探ってみた。【柴沼 均】

■■テーマはユビキタスとブロードバンドビジネス

 今年のテーマは情報通信白書(情通白書)は「ユビキタス」、インターネット白書(ネット白書)は「ブロードバンドビジネス元年」と設定。白書といえば硬いものが多いが、両方ともグラフ、図を多用。特に情報通信白書は動画をふんだんに使ったCD−ROMを発表するほか、40ページほどのリーフレットを発行するなど、国民に身近に感じてもらおうとしている。

 ネットの世帯普及率は60.6%と6割を超えた(情通白書)。さらに、ブロードバンド利用者はネットユーザーの半数を突破(ネット白書)。全体からみるとまだ4分の1だが、ブロードバンドは世界で最も低廉・高速(情通白書)のため、今後もハイピッチで浸透していくとみられる。

 また、モバイルインターネット利用者が多いのも日本の特徴。世界的にみても、日本の携帯電話のネット対応率は89.5%で、韓国の87%を上回りトップ。米国12.1%、英国9.3%、フランス12.5%など欧米に比べると圧倒的に高い(情通白書)。さらに、日本が世界に先駆けてスタートした第3世代携帯電話も順調に伸びている。

 さらに、情通白書では今年からIP電話とホットスポットの状況も調査。IP電話の導入状況は個人が7.3%、企業が11.1%。特に企業は「導入予定あり」が42.7%あり、IP電話もいっきに広がりそうだ。ホットスポットも03年3月の1624カ所が04年3月には5350カ所と3倍増。今後はデジタル家電、ICタグ、デジタル放送など新技術が続々と登場していくため、ユビキタスネットワークに進化すると分析する。

■■生活に入るインターネット

 情通白書では1日の生活場面別にネット利用時間を調査。「家での休養時」が77.6分で最も多く、「学校・勤務先」が77.4分、携帯電話などの普及により「移動中」も9.4分など、起きている時間なら場所を問わず、生活の中でネットを理由している様子が分かる。

 また、ネット白書によるとブロードバンド利用者は1週間あたり15時間以上の利用者が過半数を越える一方、ナローバンドでは15時間未満の方が多い。今後、ブロードバンド化とともに、長時間利用が増えることが予想される。

 ネット白書ではアプリケーション別のさまざまな分析を行っている。ニュースをどこでみるかはテレビ41.3%、ネット23.1%、新聞14.7%、ニュースメール配信6.4%と、新聞を追い抜き、テレビにせまっている。

 また、携帯電話のメールを含め、1日に100通以上のメールを受け取るが1割以上と昨年に比べて倍増。音楽配信サイトからのダウンロードも前年より3.2ポイント増の11.8%、オンラインゲームの利用経験者も14.0%増の38.5%と、身近なネット利用がどんどん増えていることが浮き彫りとなった。

 反面、有料コンテンツの購入者は昨年より8%減少した40.1%にとどまった。有料情報に支払う金額も月額1000円未満が7割を占める。ネット白書では、インターネット利用者の裾野が広がり、無料で満足できるコンテンツが多いためと分析している。

 また、ブロードバンドで敷居が低くなってきた個人の情報発信は、コミュニティでの発言33.1%、オークションの出品31.0%、個人ホームページ開設15.7%などさまざま。ブログが急速に普及していることもあり、ますます、個人の情報発信は加速化していくとみられる。

■■不安はセキュリティー

 情通白書によると、個人がユビキタスネットワークサービスを利用するうえで感じる不安(複数回答)は「詐欺・悪質商法に遭うこと」62.7%、「企業の保有する個人情報の流出、不正利用」59.7%、「不正アクセスによる個人情報の悪用」58.2%。便利さの反面、不安も感じていることが分かる。

 一方、企業にユビキタスネットワークへの課題を聞いたところ、消費者向け企業は「個人情報保護に関する問題」57.1%、「ネットワークセキュリティーのリスク」48.6%。事業者向け企業も「ネットワークセキュリティーのリスク」が55%でトップ。セキュリティー問題が、技術やコストの問題を上回った。

 また、ユビキタス社会のマナー向上のために重要な項目では「個人の自覚・責任」が89.3%と圧倒的。「法規制」37.8%、「企業の自主規制」27.5%を大きく上回っている。迷惑メールの法的規制や企業の個人情報漏えい対策がなかなか効果を挙げない現状をみても、遠回りかもしれないが、企業も含めて利用者一人ひとりの意識向上がなければ、ユビキタス社会はマイナスの側面を伴ってしまうだろう。

総務省
http://www.soumu.go.jp

インプレス
http://www.impress.co.jp/

〔毎日新聞〕


2004.07.10


出戻りラッシュVol.49

元々誰にも得意不得意がありますし、ビジネスキャリアにはそれぞれの専門分野があるのですから、彼女に元々のリクルートをキャンセルしてしまった女性の穴を完全に埋め切れるはずもないのですし、そもそも簡単に代替が効くような人物を事業の中核に据えることもないのです。

埋め切れない箇所に対してどのような対処をしていくか、例えば分散したパートを担うことのできる新規スタッフをリクルートする、あるいは事業予算計画自体を修正するといったような対策を講じることに力を注いで欲しかったのですが、彼女の意識は独力で空いた穴を埋め切ることだけに集中してしまったようです。

彼女にも、そして元々のリクルートをキャンセルしてしまった女性に、ひいては世間一般のほとんどの人達に欠落してしまっていたもの、それはマネージメントメンタリティーつまり経営者としての発想やセンスでした。(続く)