DAILY SHORT COLUMNS - Daily Life -

 
2006.03.26
■尊厳死疑惑:「同意」「死期」が焦点に

 富山県の市民病院の外科部長(50)が人工呼吸器をはずす「延命中止行為」で00年から5年間にがんの末期患者ら7人が死亡した。医師の行為は殺人なのか、それとも安楽死や尊厳死にあたるのか。警察は関係者から事情を聴くなど慎重に捜査を進めているが、「事件」は改めて終末医療の難しさを浮き彫りにしている。

 「患者さんのための尊厳死だ」「家族の同意を得ている」。25日の会見で射水市民病院の麻野井英次院長は、外科部長が呼吸器をはずす行為について、そう病院側に説明していることを明らかにした。 

 富山県警は殺人容疑などを念頭に捜査を進めているが、今回のケースとほぼ同様の事件が最近あった。04年2月に北海道羽幌町の道立病院の女性医師(34)が無呼吸状態の男性患者(当時90歳)の呼吸器をはずし死亡させた事件だ。

 道警は約1年後に医師を殺人容疑で書類送検した。事件は、治療行為の中止で医師の刑事責任を問う異例のものだったが、道警幹部は「安楽死の判断とは別」との見解を示しており、安楽死の判断と刑事処分については、検察側に判断を預けた形だ。

 これまで安楽死の判断を示したものとしては、95年3月の横浜地裁判決がある。神奈川県の東海大付属病院での「安楽死」事件での判断で、安楽死を認める4要件のほかに、治療行為中止(尊厳死)が認められるケースを提示している。

 行為が自然に死を迎えさせることにつながるもので、条件として不治の病での末期状態にあることや患者の意思を確認・推定できることを挙げた。道警が送検した医師についても検察側は「地裁判決の要件をベースに、総合的に判断する」としている。刑事処分で安楽死や尊厳死を認めた例はなく、判断が注目される。

 今回の捜査でも、まず患者が末期症状だったとした医師の判断が正しかったかどうかの検証が必要となる。医師が遺族、もしくは患者に治療行為中止の意思を確認していたかも重要なポイントだ。病院側の説明では、カルテには家族の「同意を得ている」との記述があるが、同意書はない。医師による説明の経緯などについて詳細な捜査が必要になる。

 ある警察幹部は「横浜地裁の示した要件や過去の事例を参考に、慎重に捜査を進める」と話す。法務・検察関係者は「他の医師の意見も聞くなどして死期が迫っているかどうかを慎重に判断しているか、医師が十分な説明をしたうえで患者側が自発的に意思表示をしているかが捜査の焦点になるのではないか」と指摘している。

 ◇「治療中止」に基準なく

 今回のように、医師が患者の死期を早めるような事件が後を絶たない。その背景について、兵庫医大救命救急センターの丸川征四郎教授は「患者にも家族にも、延命治療を望まない人がいる。ベテラン医師になると、経験からそうしたものと思い込み、本人や家族との意思疎通が不十分でも、希望に添ったつもりの善意で治療中止をする場合がある」と説明する。

 末期医療の現場では、医師が患者本人や家族から「早く楽にしてほしい」と頼まれ、医師自身も「どうせ助かる見込みがないのなら」という同情に似た気持ちが現れることもある。日本ホスピス緩和ケア協会会長の山崎章郎医師は「それでも多くの医師はそれを乗り越え、患者の心身の痛みを和らげて命を見守る努力をする。命を尊重しつつ、患者の苦痛を和らげるのが基本で、苦しがっているから命を止めるというのは医療ではない」と話す。

 しかし、現場の医師が実際に治療を中止する場合、具体的にどんな手続きを取ったら合法となるのか、法律上の明文規定はない。横浜地裁が示した要件も定着してはいない。厚生労働省の「終末期医療に関する調査等検討会」は「判断基準は明らかでなく医療関係者は悩む」と報告書に盛り込んだうえで、「医学会などがガイドラインを作るべきだ」と提言した。

 提言を受け、「日本集中治療医学会」は昨年、治療中止の基準作りを始めている。基準の素案は、中止の前提として(1)複数の医師による最高水準の治療(2)救命不可能なことを複数の医師が繰り返し確認する(3)家族に十分に説明し、治療中止以外にも選択肢を提示する−−などを求めている。

 ◇法制化には賛否両論

 国会では、超党派の「尊厳死法制化を考える議員連盟」(中山太郎会長)が05年2月に発足、活動を続けている。11月には、患者の意思に基づく延命治療の中止を認める法案づくりを進めることを決め、医師や弁護士、行政など関係団体の意見を聞いている。

 また、日本尊厳死協会(井形昭弘理事長)は05年6月、国民が尊厳死を選ぶ権利や延命治療を中止した医師の刑事責任を問わないことなどを法制化するよう求める請願書を14万人分の署名とともに議員連盟に提出した。。一方、法制化に反対する学者や難病患者は「安易に死を選ぶ風潮をつくりかねない」と批判している。

 井形理事長は「今回のケースは薬物を注入するなど積極的な行為をする『安楽死』とは異なり、尊厳死に当たるかどうかが問題だろう。しかし、家族からの伝聞だけでは、本人の意思を確認したとはいえず、尊厳死にも当たらない。医療現場が混乱しないように一刻も早く法制化によって明確な基準を作ってほしい」と話す。【山本建】

 ◇国民の74%「単なる延命治療はやめてほしい」

 厚生労働省の「終末期医療に関する調査等検討会」は03年、末期医療について世論調査をした。延命治療中止を望む国民は7割を超え、医療関係者では8割に達した。一方で「積極的に生命を短縮する」行為への賛成はわずかで、医療関係者ほど慎重な現状も浮かんだ。

 調査では一般国民の80%、医師の92%、看護師の95%が、末期医療に「関心がある」と回答した。自分が「痛みを伴う末期状態(余命約6カ月未満)」になった場合に「単なる延命治療はやめてほしい」などの回答は、一般で74%、医師で82%、看護師で87%に達した。

 しかし、「医師が積極的に生命を短縮させる」ことを認めたのは、一般で14%、医師で3%、看護師で2%に過ぎない。「苦痛を和らげることに重点を置く」が一般で59%を占め、医師や看護師では8割を超えた。

〔毎日新聞〕


2006.03.24

■今世紀末、氷河融解で海面数メートル上昇

 地球温暖化でグリーンランドなどの気温が上昇、21世紀末に、現在より海面が数メートル高かった13万年前と同じ状況になると、米アリゾナ大や米国立大気研究センター(NCAR)などのグループが予測した。100年で数十センチの海面上昇とされていた従来の予測を上回る結果で、24日付米科学誌サイエンスに発表した。

 グループは、北極周辺の夏の日射が現在より強かった約13万年前の時代に注目。当時の気候を推定するとグリーンランドの気温は約3度高く、氷がとけ、海面が2〜3メートル上昇することがわかった。この海面上昇で南極の氷床が不安定になり、流出すると海面はさらに上がる。この予測は、当時の海面は現在より4〜6メートル程度高いという地質学上の証拠から導いた推定ともほぼ一致した。

 一方、二酸化炭素の増加が原因となる地球温暖化の将来を予測すると、21世紀末にはグリーンランドの気温が約13万年前と同程度になることがわかった。当時と同じように海面は数メートル上昇する恐れがあり、そうなると世界の海岸部にある低地は水没する。

 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、今後1000年間で5メートル以上、100年で数十センチの上昇を推定しているが、グループは過去には1年に2センチ海面が上昇した証拠もあるとして、上昇が速く進む可能性を示唆した。しかし、阿部彩子・東京大学気候システム研究センター助教授は「13万年前の海面上昇に何年かかったかは不明なので、今後100年間で当時と同じような海面上昇が起こるかどうかはわからない」と話している。

〔朝日新聞〕


2006.03.19

お詫びと近況のご報告(business & life共通)

すっかりとまた休眠してしまいました。ごめんなさい。

ご心配いただき時折メールを下さったメールマガジンの読者やサイトリピーターの方々には、ここであらためてお詫びとお礼を申し上げます。

もともとスローな運営ペースでしたが、さすがに昨年4月以来ここまでの長期間にわたる休眠はありませんでした。

またこのところすっかりとメールマガジンの発行もできていませんでしたし、このサイトの更新も、時折ニュースのクリップを掲載するばかりで、ショートコラムすらもすっかりと滞っていました。

ここ数年にわたる私自身の経緯においても大きな転換期を迎えていたこと、それに加えて私の身近においても様々な事件が重なり、多忙を極めていたのです。

またここで今後の見通しをお伝えしても、あくまで予定は未定、メールマガジンとこのサイトは、私の生ある限りは淡々と継続していくということ以外は、確定的にお伝えできることはありません。毎度悪しからずご容赦いただければと思います。

私自身ならびに周囲の整理にも目処がついてきつつありますが、まだ若干の時間を要する見込みです。もうしばらくこのような休眠状態が続くことと思いますが、近く復活させてまいりますので、その節にはまたよろしくお願いいたします。


2006.03.11

■世界人口の5人に1人が水不足・国連、政策の不備を指摘

 地球上には十分な淡水資源が存在するにもかかわらず、適切な政策が取られていないため、世界人口の5分の1が安全な飲み水を確保できない状況にあるとする世界水開発報告書を、国連が11日までにまとめた。16日からメキシコで開かれる第四回世界水フォーラムに向け、国連環境計画や世界保健機関など24の機関が協力した。

 報告書によると、11億人の人が十分な飲み水を得られず、上下水道などの適切な衛生設備を持たないために感染症の危険にさらされている人が26億人も存在。安全な飲み水と衛生設備があれば年間160万人が命を落とさずにすんだという。

 報告書は、水に関連する投資や国際援助が不十分なことに加え、資源管理の人材育成や組織づくりの遅れなどが原因と考えられると指摘。2015年までに安全な飲み水を利用できない人口を半分にするとの国連のミレニアム開発目標が、達成できない地域が出る恐れがあるとした。〔共同〕

〔日本経済新聞〕


2006.03.08

■太陽活動07年から活発化か・通信などに障害の恐れ

 ほぼ11年周期でピーク(極大期)を迎える太陽活動について、米大気研究センター(コロラド州)のチームは6日、早ければ来年終わりごろから活発化し、次の極大期は2012年ごろになるとの見通しを発表した。従来の予測より約1年遅い。

 極大期には、太陽表面から電気を帯びた粒子が大量に噴き出すなどの現象が増え、過去にも通信や送電に障害が出ている。01年ごろだった前回に比べ、次回は黒点数や太陽表面の大爆発であるフレアの発生が30―50%多くなるとみられ、人工衛星や地上の送電施設などへの障害が前回より増える恐れがあるとしている。

 センターは今回、米欧の観測衛星SOHOが得た太陽内部の磁気データなどを盛り込んだ太陽活動のコンピューターモデルを開発して予測。従来は、こうした詳しいデータを使っていなかったため、実際の活動とずれる例もあった。チームは「正確に予測できれば障害を最小限にできる」と話している。

〔ワシントン6日共同〕


■先進国の寿命100歳へ 米学者、2030年までにと予測

 がん治療などの医療や老化防止研究が現在のペースで進み普及すれば、人間の平均寿命が2030年までに100歳前後になる可能性が高いとの予測を米スタンフォード大のシュリパド・トゥルジャパーカー教授(生物学)がまとめた。ただし、恩恵は高価な先端医療を受けられる先進国に限られ、“命の南北格差”は拡大する見通しだ。

 同大広報部が明らかにした教授の研究によると、世界各地の人口増加率や経済レベルのデータに、医療や老化防止の進歩と普及の予測を当てはめると、現在80歳前後の先進国の寿命は10年から30年にかけて飛躍的に延び、100歳前後に達すると推測できるという。

 しかし、進歩がめざましいがん治療や老化防止研究による医療を受けられるのは今後も豊かな国々の人に限られる見通し。トゥルジャパーカー教授は、アフリカでエイズ問題が深刻化しながら高価な治療薬は先進国に偏在する現実を指摘し「こうした現状を変えなければ貧しい国は(貧困の)悪循環に陥る」としている。

 米医学会には、同教授のように医療技術の進歩を重視し、寿命が延びるとする予想がある一方、米国を代表とする先進各国では肥満問題が深刻化し、糖尿病罹患(りかん)率の増加で今後、平均寿命は短くなっていくとの見方もある。

〔産経新聞〕


2006.03.04


■南極の氷、東京ドーム約40万個分消失

 過去3年余の間に、南極大陸の氷が東京ドーム約40万個分も失われたことが、米航空宇宙局(NASA)とドイツによる観測でわかった。

 衛星2基を使い、南極付近の重力の変化を調べた。これまで南極の氷の増減を詳しく知る手段は限られ、特に陸地を覆う氷の正確な増減量はわかっていなかった。米科学誌サイエンスの最新号に掲載された。

 観測チームの発表によると、2002年4月〜昨年8月の観測で、南極の西部を中心に、氷が1年当たり約152立方キロ・メートル(ドーム12万個分)ずつ失われたことが判明した。地球の海面を0・4ミリ上昇させる水の量に相当し、3年で1・2ミリ海面が上昇したことを意味するという。

〔読売新聞〕