■□■第29号■□■
≪号外≫
STOP ROKKASHO!
("What's Cool Business!?" & "What's Cool Life!?"共通)
朝日新聞関連記事
続・原発の現実、、、
まずは知ることからすべては始まる。。。
◆下北よ! 原子力と私たち
(5)核燃サイクル 完成近く
下北半島は数多くの原子力施設を抱える国内最大の「原子力基地」だ。
そして、そこに新たな施設が加わる可能性がある。
ウランの「転換工場」と「再転換工場」である。
核燃料の加工の一部を担う施設だ。
有力な候補地は、六ケ所村とされる。
◇
原子力関連企業などでつくる日本原子力産業協会の副会長で、
三菱マテリアル名誉顧問の秋元勇巳(ゆうみ)氏(78)が昨年末、
朝日新聞記者の取材に応じた。
原子力産業を代表する論客の一人だ。
すでに再処理や燃料加工が行われることが決まっている六ケ所に、
ウラン転換工場と再転換工場を造るのが「合理的」だと、秋元氏は言う。
「ウランなど、ものの流れがあっちに行ったりこっちに行ったりすると、
輸送コストがかかって経済的に良くないし、
セキュリティー的にも、好ましくない。
核燃サイクル関係の施設が遠く離れていない方が有利なことは、間違いない」
再処理工場は今春にも稼働し、
MOX燃料加工工場も今年中に着工される見通しとなっている。
秋元氏は、こうして核燃サイクル施設が整いつつある状況をふまえ、
わが国はウラン転換、再転換工場も備えることで、
一連のサイクル施設を「フルセット」化することが必要だと力説する。
背景には、近年、国際原子力機関(IAEA)や
米国が唱えている核燃料の国際管理構想がある。
テロに使われかねない核関連技術の拡散を防ぐため一部の国が技術を独占し、
電力を求める残りの国に燃料などを供給する、という構想だ。
秋元氏は解説する。
「この構想で言うと、
日本は燃料の供給国側に入ることを認めてもらえたことになる。
それなのにフルセットではなく、
たとえば再処理だけを細々とするということでは、
他国への十分なサービスにならない」
秋元氏によると、核兵器を持たない国としては世界で唯一、
日本は大規模な核燃サイクル路線を進めることができるというのだ。
その国策遂行の舞台が六ケ所村であり、下北半島だ。
◇
東通村。
越善靖夫村長は、
高レベル廃棄物の最終処分を含む核燃事業の「勉強会」を計画中だ。
三村知事に牽制(けんせい)されつつ、
処分場誘致に前向きともとれる動きが活発化している。
用地選定のメドがいっこうにたたない最終処分場は、
日本の核燃政策がいま抱えている最大の課題のひとつ。
秋元氏とのインタビューで、記者の質問がこの問題に話が移ると、
「あまりにも1カ所に施設が集中しすぎることのリスクもある」。
秋元氏は慎重な口ぶりで語った。
「自分のところだけが損をして、都会だけが得をしているじゃないか、
という議論がよくある。確かにそう言われても仕方ない面がある。
地域格差をなるべく解消していくことが大事だ」と一般論を述べた。
一方で、このように指摘するのだ。
「青森県はすでに、いろんな核燃事業をやっているので
原子力に対する理解度が高いと思う。
(処分場をめぐって揺れた)高知県など、他県とは違いがある」
東通村が核燃事業の勉強に積極的な姿勢を見せる理由は
「理解度」の高さだけではない。
東通村関係者は、核燃と村の将来をこう話す。
「廃棄物は隣にある六ケ所村でつくられる。
処分場が東通村にあれば、運搬コストは小さくて済むよ」
原子力船むつの開発当時から、
青森県の原子力政策にかかわってきた元県幹部が、匿名で取材に応じた。
元幹部の目には、処分場拒否を口にし続ける青森県の動きが、
「建前だけ」のものに見えて仕方がないという。
現職の時を振り返り、こう締めくくった。
「60年代に原子力船むつを受け入れた時に、
青森県は決めたんだ。『原子力しかない』と」
(小宮山亮磨)
◆(番外編)河野太郎・衆院議員に聞く
国策としての「核燃サイクル」事業を進める自民党の国会議員でありながら、
河野太郎氏は使用済み核燃料再処理反対を明言している。
元日付から始まった新年企画「下北よ!」をひとまず締めくくるにあたり、
河野氏の主張に耳を傾け、
日本のエネルギー政策の「あり得べき、もう一つの進路」を考えたい。
(インタビュー・構成 北沢拓也)
――河野さんは、かねてから使用済み核燃料の再処理に反対しています。
その理由は何ですか。
再処理は本来、高速増殖炉で燃やすためのプルトニウムを取り出す作業だった。
だが、肝心の高速増殖炉ができていない。
北朝鮮のプルトニウム保有をこれだけ問題視しているのに、
高速増殖炉の実用化にめどがたたない中で、
日本が何兆円もかけて再処理をやり、
プルトニウムを取り出してため込むことには、全く合理性がない。
再処理を必要とする論理はこうです。
ウランを燃やすと、使用済み核燃料ができる。
捨てるのはもったいないので、プルトニウムを取り出して高速増殖炉で燃やす。
そうすると、投入量より多いプルトニウムができて、
日本のエネルギーは千年もつでしょう。バラ色ですね、と。
30年前、「高速増殖炉は30年後に完成する」と言われていた。
けれど、もんじゅ(高速増殖原型炉)が止まり、
政府は「2050年まで実用化できない」と、認めているのが現状です。
再処理は今すぐやめるべきです。
――ほかに問題点は?
電気事業連合会は
「プルサーマルは、ウランのリサイクル」というが、おかしい。
プルサーマルで節約できるウラン資源の割合は1〜2割と言われています。
ウランは約80年しかもたないと言われているが、
何兆円もかけて再処理をしても、
ウランが使える時間が1〜2割しか伸びないのなら、
ウラン鉱山を買い占めた方がいい。
こう言うと、「河野は反原発だ」と言われる。
だが、核燃サイクルとは何か、
今、何が問題となっているかを、
きちんと理解している政治家はほとんどいない。
「補助金をもらえればいい」
「票をもらえればいい、だから再処理を進めるんだ」
という程度の認識ですよ。
「高速増殖炉ができていないのに、なぜ再処理をやるのか」
という私の疑問に答えてくれる人はいない。
――河野さんが指摘しても政治的議論に発展しません。
よく分かっていない政治家が、
官僚や電力会社の説明をサラッと聞くから、議論をする下地ができない。
核燃サイクルをきちんと理解している国民も少なく、
反対意見が盛り上がってこないのも一つの要因です。
再処理、MOX燃料、プルサーマル……。
スポンサーに遠慮して報道も細切れなので、
国民にも問題意識が浸透しないのではないか。
――原子力については、どう考えていますか。
明日止めろ、とは言えないと思っている。
東電(新潟県の柏崎刈羽原発)が止まっても平気だったけれどね。
やめるとすれば、真夏の電力確保と、
二酸化炭素の排出量をどう抑えるかが課題となる。
だが、自然エネルギーを進めれば解決できる。
「持続可能な社会」をつくろうとしたら、
再生可能エネルギー以外に道はない。
100年後か千年後か分からないが、いつかは原子力の資源もなくなる。
日本が言うべきなのは再生可能エネルギー100%を目指し、
そのために全力で研究し、投資も惜しまない、ということです。
耐用年数が来た原子炉は廃炉にし、再生可能エネルギーで補っていく。
補い切れない部分は、天然ガスを採り入れる。
日本の人口は減っていき電力消費量も減る。必死に原子力を進める必要はない。
経済産業省や電力会社は「二酸化炭素削減のためには原子力」と繰り返すが、
それは、
二酸化炭素を出さない分を高レベル放射性廃棄物に置き換えるということです。
あまりに浅はかです。
――自然エネルギーは飛躍的に広がっていません。
RPS法(電力会社に自然エネルギーの利用を義務づけた新エネルギー利用法)
ができたが、
目標は低いし年数は短いし、国策の原子力を守ろうという意識が見え見えだ。
再生可能エネルギーは値段が高いというが、
原油価格がこれだけ上がったのだから、そう変わらない。
自然エネルギーを広げていく時です。
太陽光発電の技術は昔は日本が世界でトップだった。
だが、ドイツに抜かれ、中国に抜かれ、EU(欧州連合)も続くだろう。
日本は今、大きな産業を失いつつある。
全世界に輸出でき、地球環境も守れる自然エネルギーにもっと力を入れるべきだ。
核燃に多額の金や税制優遇をするのは、間違った政策だ。
――本格操業に向けたアクティブ試験(試運転)がクライマックスに入った。
もう止められないのでは。
今から止めればいい。
アクティブ試験をやると、工場が汚染されて解体に金がかかるので、
試験前に止めるべきだと主張してきた。
青森県には迷惑をかけているから、約束した補助金はすべて出す。
無意味な事業をやめるための費用だと思えば安い。
再処理が必要とされる根底には、
各原発の使用済み核燃料の貯蔵プールが満杯になることがあると考える。
プールに入りきらない使用済み核燃料を再処理しようという道ではなく、
プール同士での使用済み核燃料のやりとりを許可したり、
プールではなく、乾式貯蔵を認めたりなど、方法はいくらでもあります。
――河野さんの主張を実現するには、どうすればよいのですか。
再処理を止められるのは政治しかないと思う。
経産省にも再処理に疑問を抱いている人間が多いと聞くが、
ここまで来たら言えないんだろう。
同じ考えを持つ国会議員もいるが、
今はインターネットなどを通して国民に訴え、
いかにばかげたことをしているかを、理解する人を増やしていくしかない。
[朝日新聞]
〜次号に続く