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MINDSHOOTING ESSAYS -What's Cool Life!?-

バックナンバー 0001

●○●創刊号●○●

 

あるところに六人の男性がいました。全員が三十歳独身です。

鈴木さんは、
とても裕福な家庭に育ち、
父親が経営する会社に次期社長候補として入社して、はるか人並み以上の自分の収入もありながら、いまだに親がかりで自宅で生活する最近増加中のパラサイトシングル、
経済的には何らの不自由もない日々を過ごしています。

加藤さんは、
育った家庭は貧しかったのですが、
人の何倍も努力をして、自分の代だけで大きな財を成し、
現在は経済的に何らの不自由もない日々を過ごしています。

伊藤さんは、
ごく一般的平均的な家庭に育ちましたが、
自分の才能や能力には自信があって、上昇指向が強く、常に努力を怠らないのですがなかなかうまくいかず、
節約は必要ですが生活していくには不自由はない日々を過ごしています。

斉藤さんは、
ごく一般的平均的な家庭に育ち、
仕事は生活の糧を得る為だけのものと割り切って、自分の趣味を大切にしながら、
節約は必要ですが生活していくには不自由はない日々を過ごしています。

高橋さんは、
とても貧しい家庭に育ち、
貧しさから何とか脱却したいと様々な努力をしていますが、何をやってもうまくいかず、
日々の生活にも事欠いています。

吉田さんは、
とても貧しい家庭に育ちましたが、
貧しさをさほど苦に感じたこともなく、特に不満も感じていません。のんびり楽しくマイペースで暮らしていますが、
日々の生活には事欠いています。

さて、どの人が最も「COOL=格好いい」でしょうか。 (次号に続く)

 

本当のところは、誰もができることならクール(格好よく/以下は省略します)に生きたいと願っていることでしょうが、現実の社会においてはクールに生きることは非常に困難なことです。

クールに生きるということは、一体どんなふうにして生きることなのでしょうか。私達一人一人の育ってきた環境も異なれば、価値観も多様化していますから、何がクールかを定義すること自体がとても難しいことですよね。

街を歩けば大勢の人が、それぞれ実に多種多様なファッションで行き交います。友人の自宅を訪ねれば、それぞれ思い思いのインテリアの部屋に暮らしています。私達はそれぞれ異なった職業に就いています。好き嫌いの趣味も異なり、ライフスタイルも多種多様です。同じ日本人同士であっても、私達は皆異なるのですから、国が異なればなおさらのことです。同国人同士ならば共通している社会の構造から異なり、風俗から文化や習慣まですべて異なるのですから、世界のスタンダーズとしてクールさを定義することは、ほとんど不可能なことのようにも思えてしまいます。

次号にも続いていく冒頭の設問を例にとれば、裕福な鈴木さんと加藤さんは、ごく一般的平均的な伊藤さんや斉藤さん、ましてや貧しい高橋さんや吉田さんよりもクールでしょうか。この六人以外の第三者の評価は分かれるところでしょうが、少なくとも斉藤さんや吉田さんのような金銭に執着をしない人達にとっては、鈴木さんや加藤さんはクールに映らないかもしれません。ということは、裕福であるか否かは絶対的なクールな条件ではないということになります。

私が時々出かけるスポーツクラブには、多くの芸能人も通ってきます。先日私はスチームサウナで某トップアイドルグループの一人と一緒になりました。私はコーナーの目立たないところに座っていたうえ、たまたまスチームがよく出ていて視界もほとんどないほどだったので、彼は私の存在に気付かなかったのでしょう。「ああっ、ああっ」と唸り声を発し息を荒げながらお腹に若干溜まった脂肪の揉み出しを始め、画面で見ている端正でスリムな印象の彼だけに少々幻滅してしまいました。また、帰りのロッカー室で、たまたま居合わせた某有名俳優に対してまるで体育会系のノリでペコペコと何度も頭を下げて挨拶をしている彼を見て、芸能人も大変なんだなと何だか可哀想に感じてしまいました。

昨日仕事の打ち合わせに向かうために電車で移動中、途中の駅で少し大袈裟かもしれませんが、目が釘付けになってしまうほど美しい女性が乗り込んできました。ドアーの近くにそっと立っていた彼女の周りが明るくなって、その車両に乗り合わせた他の乗客も性別や年齢にかかわらず気になってちらちらと眺めていたほどです。ところが、一駅過ぎたところで彼女が立っていた横の座席の端が空いたのですが、お年寄りがその駅で彼女の目の前から乗り込んできたにもかかわらず、隣の人に大きな振動が伝わるほどどっかりとそこに腰を下ろしてしまい、ポシェットから携帯電話を取り出すと、また周囲の乗客に聞こえるほどの遠慮のない大きな声で待ち合わせをしているらしい友人との会話を始めてしまったのです。すると、向い側の座席に座っていた茶髪ガングロ少女がそのド派手なきつい印象の外見からは想像できない可愛らしい声と丁寧な口調でそのお年寄りに席を譲っていて、私は思わずその場で腕組みをしてしまいました。

 

このメールマガジンは、毎号複数号にわたっての連載、一遍の一号完結のエピソード、さらに一枚のスナップショットを基本の構成として、私POPOの日々の暮らしの中でのユニークなあるいはささやかな出来事やその時々のトピックスなどを題材に様々なエッセイをお届けしていきます。雑誌をティーブレイク時にパラパラとめくる、あるいは書店で立ち読みをするような感覚でお楽しみいただければと思います。

どうして「What's Cool Life!?」なのか、クールに生きることがどんなことにつながっていくのか、これから追々に触れていきたいと思います。

力を入れずに、マイペースで長く続けていくつもりです。末永くお付き合いいただければ幸いです。

CoolShot #1 / 2000.05.22
Title / Would you like some coffee?

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