DAILY SHORT COLUMNS - Daily Business - |
2005.10.08 | ■「粉飾は常識」会計士の闇 カネボウ事件で露呈 (2005年10月3日号) カネボウ粉飾決算で4人の会計士が逮捕され、足利銀行からも訴えられた。米エンロンの会計不正では巨大監査法人アンダーセンが消滅したが……。 ◇ 「えっ、それでいいんですか」 思わずそんな言葉が口をついて出そうになった。 ある大手監査法人で働く20歳代後半の公認会計士は、約2年前に自身がかかわった塗料メーカーの監査を忘れられない。 会社に出向いての作業中、監査チームのリーダーである年配の会計士が「ちょっと」と言い残し、そのメーカーの販売担当役員とともに別室に姿を消した。しばらくして、その会計士はチームの4人が陣取る小部屋に戻って来ると、こう「宣言」した。 「例の件は、もういいからな」 この塗料メーカーの新製品は顧客からのクレームが殺到し、本来ならば数億円の補償費を経費に計上しなければならなかった。同社が当時計上していた当期利益の1割を超える金額である。監査チームは、営業現場の聞き取り調査を通じて経理部門が隠していたこの事実をつかんだものの、長くこのメーカーを担当してきたベテランの「鶴の一声」で、あっさりと闇に葬り去られた。 「『ああ、またか』と思いました。担当している企業が窮地に陥りそうになると、いつも会計士側から助け舟を出してしまうんです。架空売り上げを計上したり、回収可能性の低い債権を回収できると見立てたり。やり口は枚挙にいとまがありません」 この若手会計士は、そう自嘲気味に語った。
東京地検特捜部はカネボウの粉飾決算事件で、中央青山監査法人の4人の会計士を証券取引法違反の疑いで逮捕し、日本公認会計士協会長を務めた業界の重鎮、奥山章雄中央青山理事長の自宅も家宅捜索した。企業と会計士の馴れ合い体質がまた白日の下にさらけだされた格好だが、若手会計士からは、 「カネボウの粉飾決算なんて氷山の一角。あんなことは誰でもやっている」 とシニカルな声があがる。 中央青山に勤務経験のある30代半ばの会計士は、カネボウで行われた子会社の「連結決算外し」が、さまざまな企業で頻繁に行われてきたことを打ち明ける。 「問題のある子会社は、親会社の出資比率を下げ、連結対象から外すようアドバイスしてきました」 将来の退職金や企業年金の支払い(退職給付債務)を軽くする「さじ加減」も横行している。将来の金利動向(割引率)を高めに見積もれば、いま用意しておくべき金額は少なくて済むからだ。 「通常2%程度のところを、大手電機メーカーの中には3.5〜4%と高めの割引率にしたところがありました。ほんの1%の違いで数百億円も少なくて済みます」 こうした現場の退廃ぶりに、やる気をなくして外資系金融機関やコンサルタントに転職する若手が少なくないという。
監査法人は本来、上場企業の「品質保証」をし、資本市場の質を高める役割を担っている。ところが日本では、メーンバンクが企業の財務内容を見張り、護送船団行政によって役所が危ない会社の処理策を決めてきた。銀行と役所の存在に甘え、会計士は長らく本来の役割を放棄してきた。 「そんな戦後体制がすでに崩壊したにもかかわらず、会計士側が時代の変化に対応し切れていないのです。自分たちが『番人』であるという自覚に乏しく、依然として企業とナアナアのぬるま湯監査が続いています」 と、ある監査法人顧問は嘆く。 監査法人は、古株の会計士を頂点に十数人が集まるグループの集合体となっている。経験を積んでリーダー格となれば年収数億円の会計士もいる世界。ベテランの「先生」は得意先を失うことを恐れ、企業側のご機嫌をうかがう姿勢に陥りやすい。監査はどうしても甘くなる。 しかも、国家試験に合格し、まず会計士補として監査法人に入った若手は平均15年程度、古手を頂点としたグループで下働きをするという徒弟社会的な風土。若手が古株に面と向かって反論するのは難しい。 とりわけ、新光、伊東、中央、青山などの監査法人・会計事務所が合併を繰り返して大きくなった中央青山には出身母体ごとのグループが派閥のように存在し、「最も古い体質が残っている」(大手監査法人顧問)といわれる。 過去には山一証券とヤオハンジャパンの粉飾を見逃したとして損害賠償請求訴訟を起こされ、最近も足利銀行の新経営陣から「粉飾決算を見逃して違法配当した」として損害賠償の訴えを起こされている。
馴れ合いを生むのは、古株会計士が得意先を抱え込んだまま手放さないからである。逮捕された会計士の徳見清一郎容疑者は17年11カ月、佐藤邦昭容疑者は12年もの間、カネボウを担当してきた。 昨春施行された改正公認会計士法と施行令は、企業と会計士の癒着を防ごうと、同一企業を継続して担当できるのは7年までとし、2年間のインターバルをおかないと、その企業を再び担当できないようにした。改善されたように見えるが、「これがとんでもない」と、大手監査法人顧問は指摘する。 というのも、前述した平均15年の「下働き」期間はカウントされず、監査OKのサインができる「社員」の資格を得て初めて、7年ルールが適用されるからだ。つまり、継続して22年間も担当した後で2年休んで、再度7年担当するといったことを繰り返すと、60歳までの間に4年間しか外れる期間がないことになる。 しかも、7年ルールは、法改正以前にさかのぼって適用されないため、中央青山の主要顧客には、いまだに長期間担当するベテランがずらり並ぶ。日本電産やNTTデータは16年間も同じ会計士がサインし続けるなど、10年選手が珍しくない。 「本当は米国流に5年間担当したら5年間休むというルールづくりを考えていました」 自民党で法改正に携わった塩崎恭久衆院議員は2年前を振り返る。 このときに「監査は、その会社のことを長く担当した者でないと分からない」と、猛烈に同党議員に働きかけをしてきたのが、奥山協会長(当時)だったという。塩崎氏のような主張は次第に少数派になり、「尻抜けルール」(塩崎氏)と呼ばれる現在の「7年やって2年休む」に落ち着いた。
日本では、株主の企業監視も、会計士協会の自浄作用も甘いうえに、金融当局の規制も緩い。このため、カネボウ事件後に開かれた自民党の小委員会・部会の合同会議では、招かれた有識者から「監査法人を3年おきに変え、監査担当者は毎年交代させるべきだ」といった公認会計士制度の抜本的な見直し案が提言されている。 粉飾決算をしたエンロン破綻後の4カ月余に、監査法人のアンダーセンからは顧客企業約2300社の1割が逃げ出し、アンダーセン消滅の決定打となった。エンロン破綻後、米国では決算の正当性を宣誓させる企業改革法が成立し、米国で上場している日本企業へも同法の一部が適用されている。中央青山の大口顧客には、そんな米国で上場しているソニーやトヨタ自動車、京セラが並ぶ。 「確かに、うちの監査法人は長いな」 ソニーのち中鉢良治社長も言う。中央青山がソニーを受け持って45年余が過ぎ、同じ会計士がすでに9年間もサインし続けている。 ソニーやトヨタが自らの監査の正当性をより強く訴えるため、監査法人の見直しに動くかどうか。会計士業界は息を潜めて見守っている。 (AERA編集部・大鹿靖明) |
2005.10.07 |
ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)従来の通信会社やケーブルテレビ(CATV)会社が展開している音声・データ通信の分野に、インターネット関連企業がこれまでにないほど積極的に参入している。インターネット検索大手グーグル(Nasdaq:GOOG)は9月30日、無料の無線高速インターネット接続サービスをサンフランシスコで始めると発表した。これは、CATV会社や通信会社の有料接続サービスを利用せずに無線ネット接続を可能にするもの。 新サービスの利用者は、コンピューターにログオン後、電子メール、ネットサーフィン、音楽のダウンロードなど、従来のネット接続で可能なことは何でもできる。インターネット電話(IP電話)も可能になる。 インターネット競売大手イーベイ(Nasdaq:EBAY)は9月、ルクセンブルクのIP電話サービス会社、スカイプ・テクノロジーズを26億ドルで買収すると発表した。スカイプは、端末同士が直接通信するピアツーピアの電話サービスを無料で実施している。またマイクロソフト(Nasdaq:MSFT)は8月、小規模のIP電話サービス会社テレオを買収した。これらは、IP電話事業に参入しようとしている数多くのネット関連企業の一部。 グーグルはIP電話事業拡大のために、人気の検索エンジンのほか、多額の手元資金、880億ドルを超える時価総額など、圧倒的な資産を動員している。この時価総額は、米通信最大手である地域通信会社ベライゾン・コミュニケーションズ(NYSE:VZ)の時価総額900億ドルをわずかに下回る規模。このほかグーグルが始めた電子メール「Gメール」などの無料サービスは、ライバル各社の有料サービスにとって大きな脅威となっている。 通信各社にとってさらに問題なのは、グーグルが通信業界に全く異なるビジネスモデルを持ち込むことだ。グーグルの昨年の総売上高は32億ドルで、この大半は、検索結果などのウェブページに小さく表示される広告からの収入だ。 インターネット接続料金は通信会社の収入源として次第に大きな割合を占めるようになってきているが、グーグルが無料サービスを展開することで、従来のインターネット接続業者(ISP)に料金引き下げ圧力がかかるとみられる。 グーグルが採用する予定のWi-Fi(ワイファイ)と呼ばれる高速無線LAN(構内通信網)接続技術は、従来の通信ネットワークに比べ費用がはるかに少なくて済む。また、長年通信会社やCATV会社の大きな利点だった、利用者の家庭との直接接続を可能にする。 〔ウォールストリートジャーナル/日本経済新聞〕 【ジュネーブ=市村孝二巳】欧州連合(EU)は30日まで開いた国連世界情報社会サミットの準備会合で、米国が事実上独占してきたインターネットの管理体制について多国間で調整する枠組みを提案した。ネット上の住所にあたるドメイン名の管理方法などについて、各国政府も関与できるようにすべきだと主張しているが、米国は拒否の姿勢だ。 現在は米国の非営利団体「ICANN」がネット上の住所に当たる「.com」のようなドメイン名などを一元的に管理している。ICANNの意思決定には米商務省が一定の影響力を持ち、他国が意思決定に介入するのは難しいのが実情だ。 EUは米主導の管理体制に代わる「新しいモデル」として、ICANNを軸とする体制を維持しながら、その政策決定に複数の政府が関与すべきだと提案した。 〔日本経済新聞〕 インターネット向けに配信した記事の見出しを無断で使用され著作権を侵害されたとして、読売新聞東京本社がネットニュース配信会社「デジタルアライアンス」(神戸市)に見出しの使用差し止めと損害賠償を求めた訴訟の判決が6日、知的財産高裁であった。塚原朋一裁判長は請求を棄却した一審判決を変更、デ社の見出しの無断使用を不法行為と認め、約23万円の支払いを命じた。 判決理由で塚原裁判長は、著作権法に基づく権利保護は否定したものの「見出しは多大の労力、費用をかけた報道機関の活動が結実したもので、相応に工夫されている」と指摘。営利目的に無断で反復使用することは「法的保護に値する利益を違法に侵害しており、不法行為が成立する」と述べた。 見出しの無断使用が一定の場合には不法行為に当たると認めた司法判断は初めて。 〔朝日新聞〕
ネット上での情報「ただ乗り」を違法とした6日の知財高裁判決。敗訴したインターネットサービス会社は、この判決を伝えるニュースの見出しも一時無断使用した。 初の司法判断に、IT(情報技術)関連会社からは「我々は情報の配信元に対価を払っており、判決は当然」との声が上がる一方、「実は我が社も似たようなビジネスを考えていた」という反応もあり、情報を無料のものととらえがちな“ネット文化”の一面ものぞかせた。 「見出し無断使用、ネット会社に賠償命令…読売逆転勝訴」。判決を速報したヨミウリ・オンラインの見出しがそっくりそのまま、敗訴した「デジタルアライアンス」(神戸市)の「一行ニュース」に流れた。 読売新聞が問い合わせたところ、6日午後5時半ごろ、「見出し著作権裁判―デジタルアライアンス社に賠償命令―知財高裁」と別の見出しに差し替えられた。デジタル社の有本哲也社長(34)本人が考えたものだという。 有本社長は「裁判結果をお客さんに伝える必要があり、一番早くネットに流した読売の見出しを使った。いつも通りの対応だった」と釈明。しかし、「判決を詳しく検討して今後の対応を決めなければならず、今、波風を立てるのは良くないと思った」ため、差し替えたという。 判決にネット業界の反応は分かれた。 大手ネット会社の担当者は、「我々の仕事は、新聞社など情報発信元に対価を支払って成立している。画像や音楽を無断でコピーして広める違法サイトの行為を考えれば、無断使用を認めない今回の判決は当然」と評価した。 これに対し、ライブドア(東京・港区)のネットニュース事業部は、「見出しだけの使用ならグレーゾーンだと思う。凝った長い見出しならともかく、例えば『小泉退陣』程度なら問題はないのでは」と言う。 同社は全国の地方紙やスポーツ紙の見出しを一覧できるサービスも検討しており、「判決の流れが定着すれば難しくなるかもしれない。技術に判決が追い付いていない気がする」とも語る。 報道機関のネット配信記事を巡っては今年3月、AFP通信(フランス)が米グーグルに対し、無断でAFPの見出しを流すのは違法だなどとして、18億円超の損害賠償を求めて訴えたケースがある。 一方、判決は、見出しを一般的には「著作物」とは認めなかった。これに対し大手化粧品会社などに勤めたベテランのコピーライターで、「たった1行で!売る」の著作がある田村仁さん(60)は「見出しは、複雑な内容を一瞬で分かりやすく伝えるもので、創作力なくして作れない。公共性あるニュースを伝える知的な著作物だ」と反論。 その上で、「著作権が認められないと、コピーや見出しを付ける我々の努力は否定されることになる」と異議を唱えている。 〔読売新聞〕
ネット上での見出しの無断使用を不法行為とした控訴審判決について、AFP通信は東京発で6日、「日本の新聞が、見出しのオンライン使用めぐる損害賠償請求訴訟で勝訴」との見出しで世界に配信した。記事は「判決は、新聞の見出しに保護を与えた、日本では初の判断」だとして、提訴にいたった経緯から判決内容を紹介している。 〔読売新聞〕 1台の携帯電話機を家庭やオフィス内で固定電話の子機のように使い、屋外では携帯電話として使う「固定・携帯融合サービス」が2007年度にも、実現する見通しだ。総務省は通信会社による新サービスの導入を後押しするために、固定と携帯の番号を一本化する方針を固めた。利用者は室内で携帯を利用するときは割安な固定回線で通信することができ、利用料金が大幅に安くなる。 新サービスは無線LAN(構内情報通信網)の機能を搭載した新型の携帯電話機を持ち歩けば、利用者がいる場所に応じて回線が自動的に固定、携帯に切り替わる。家庭やオフィス内では携帯と固定電話を無線LANで結び、固定回線を使って通話。屋外に出て無線LANでの接続が途絶すると携帯回線につながる。 家庭内で携帯で市内に電話をかける場合、現在は3分間100円前後の携帯料金が10円以下の固定料金を支払うだけで済むようになる見通しだ。携帯電話と固定電話の両方に基本料金を支払う必要がなくなる可能性も高い。 〔日本経済新聞〕 西武鉄道グループの中核会社「コクド」の株を巡り、異母弟の堤義明・コクド前会長(71)らを訴えた堤清二・セゾン文化財団理事長(78)のインタビュー記事が、8日発売の月刊誌「中央公論」(中央公論新社)11月号に掲載される。 西武鉄道株の名義偽装事件で証券取引法違反に問われて公判中の義明氏について、清二氏は「独裁でやってきた結果、すべてを失った」などと批判している。 作家、詩人としても活躍する清二氏は、「辻井喬」のペンネームで雑誌に寄稿するなどしているが、実名でインタビューに応じるのはまれで、同グループの問題について語るのも珍しい。 清二氏はインタビューの中で、コクド株の所有を巡る訴訟で義明氏も訴えたことについて、「(グループ経営陣が)誰にも義明君を会わせないようブロックしている。そういう状態なので、気は進まないが、義明君を訴えて法廷で意見を述べるしかない」と説明。また、義明氏が自身の結婚式に自分の母親を呼ばなかったエピソードを披露し、「少なくとも僕にはできない。DNAが違う」などと語っている。 さらに、グループを鉄道・沿線事業会社とホテル・レジャー事業会社に再編し、最大1600億円増資するという西武鉄道の経営再編策について、清二氏は「笑い出すような抽象案。経営として見ると、実行不可能だ」と批判。コクド株訴訟の決着がつかない段階でグループの経営再編を急ぐ現経営陣を、「『既成事実を作っちゃえば勝ち』という思想が経営陣にあるのはよくない」と指摘している。 〔読売新聞〕 |