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2005.09.18 ■(働き手はいま)「派遣」、工場の調整弁

 事務系の職場だけでなく、工場でも派遣労働者が急増している。1年半前に製造現場への派遣が解禁され、厚生労働省が16日発表した調査結果によると、派遣労働者全体の約3分の1が製造業で働く。正社員より人件費が安く、生産量の変化に応じて増減させやすい「調整弁」の新たな形態として、経営側は積極活用し始めたが、非正社員の中に「重層構造」を生み出している。(堀篭俊材、内藤尚志)

●非正社員、進む「重層化」

 「そんなやり方はトヨタじゃ通用しないぞ」。人材派遣大手・フルキャストとトヨタ自動車系の車両製造会社が共同で設けた派遣会社の研修センター(神奈川県相模原市)では、部品組み付けの研修中の若者に、講師役の男性(58)がハッパをかけていた。

 トヨタ自動車の工場で働く予定の派遣労働者に生産管理の厳しい「トヨタ流」を2日間で教える場だ。40〜50秒ごとに車体が流れる中で、20秒で済ませないといけない作業に1分近くかかると、注意が飛ぶ。

 その場にいた北海道、沖縄出身の9人の派遣労働者は研修後、トヨタの工場で3カ月〜1年間働くという。派遣労働者になった理由はさまざまだが、「地元に仕事がない」は共通だ。

 札幌市でフリーターだったという男性(22)は「コンビニエンスストアでのバイトは毎日じゃないので、サボり癖がつく。工場の仕事は厳しいけど、苦労は自分のためになる」と話す。沖縄から来た男性(43)は中学1年の息子のことを思いやる。「多感な時期なので、なるべくそばにいてあげたい。派遣ならば数カ月で帰れる」

 国内12工場でフル生産が続くトヨタの製造現場は正社員約4万人、期間従業員(4カ月〜3年)約1万人を抱え、こうした派遣労働者(約500人)も加わっている。

 派遣で、増産に向けた人手不足を埋め、生産が一服すれば派遣を減らして調整する。寮などは派遣会社が用意するので、トヨタは「総人件費も期間従業員より安上がり」(幹部)という。

●労組、支援策を検討

 こうした非正社員の急増に労働組合も対応し始めた。全トヨタ労働組合連合会は16、17日の定期大会で「期間従業員やパート、派遣社員など就労形態の違いによらず、同じ働く仲間として組織のあり方に真正面から取り組みたい」という方針を決めた。非正社員の組織化も検討する考えだ。

 派遣解禁以前に製造現場を支えてきた非正社員は、生産ラインを丸ごと請け負う業務請負会社の労働者(請負労働者)だった。派遣先メーカーが指揮・命令を出すことはできないが、生産量の変動に備えやすいとして、重宝がられてきた存在だ。だが実際には、製造現場でのシフト変更などに際し、メーカーが請負労働者に指示することは少なくないとされる。

 請負労働者に対し、メーカーが指揮・命令することは、安全管理の責任をあいまいにするため、「偽装請負」(実質派遣)として禁じられている。だが、大阪労働局が今年5〜8月、管内191の派遣事業所に自主点検を求めると、28事業所がこれをしていた。派遣労働者が製造現場で働ける期間は現在、最長でも1年なので、業務請負への需要が依然根強いのが現実だ。

 「偽装請負は、自社以外の労働者を好き勝手に使いたいという企業の身勝手な論理の表れ」と岩手県一関市の自営業、上段のり子さん(56)は指摘する。

 半導体製造装置を作っている、ニコンの埼玉県内の工場に、名古屋市の業務請負会社から送り込まれ、働いていた次男(当時23)が99年に自殺した。上段さんは両社を相手に訴訟をおこし、今年3月、東京地裁が「自殺の主因は業務の過重性に基づくうつ病」として両社に約2490万円の支払いを命じた。

 判決は、次男は「製造現場でニコンの指示を受けていた」と事実上、偽装請負状態だったことを認め、ニコンにも安全管理に責任があるとした。

 また、閉ざされたクリーンルームでの過大な連続勤務や時間外労働に加え、当時の半導体不況でニコンが打ち出した非正社員の縮小方針で「解雇不安に襲われ、通常以上の精神的負荷を被った」とした。現在、控訴審で係争中で、ニコンは「裁判で主張は明らかにしていく」としている。

●雇用の形態「不安定に」

 業績回復に向けた民間企業のリストラで、97年から04年までに正社員が約400万人減った。代わって派遣・請負労働者などの非正社員が雇用者(役員を除く)に占める割合は、90年には約2割だったが、04年には約3割まで達した。

 唐津博・南山大大学院教授(労働法)は「パートや請負、さらに派遣といった就労形態が入り乱れ、製造現場では労働者の重層化が進んでいる。いずれの形態も有期契約であり、雇用は不安定になる恐れがある。さまざまな就労形態を労働者の人生設計に合わせて選べるのが望ましいが、非正社員から社員になるのは難しくなっている」と話す。

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 「働き手はいま」は随時掲載します。

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◆キーワード

<派遣労働者(派遣社員)> 派遣会社と雇用関係を持ち、そこから派遣された先の企業の指揮・命令で仕事をする。指揮・命令を、雇用関係のある業務請負会社から受ける請負労働者(請負社員)とは異なる。労働者派遣法の改正で04年、自動車の組み立てラインなど製造現場への派遣が最長1年間の制限(07年からは3年間)つきで解禁された。

〔朝日新聞〕


2005.09.10

■次世代携帯、早くも火花 ドコモとKDDIが対抗

 高速で通信できる第3世代(3G)がようやく主流になりつつある国内の携帯電話業界で、早くも3Gを改良して光ファイバー並みの速さを目指す次世代携帯の争いが熱を帯びている。NTTドコモは欧州やアジアの携帯電話会社を束ねて「スーパー3G」構想を進め、KDDIも固定通信との融合を掲げた「ウルトラ3G」構想で対抗する構図だ。ともに5年後の実用化に向け、国内外の通信会社やメーカーとの連携を図っている。

 携帯電話はアナログ方式の第1世代(1G)、デジタルの第2世代(2G)と進化した。通信速度が2Gの数百倍になったのが3G。ドコモの「FOMA」やau(KDDI)の「CDMA 1X WIN」などがこれにあたる。

 第3世代の「次」でも通信速度が一段と増す見通し。両陣営とも今の数十倍を目指している。テレビ映像並みの高精度な動画もメールでやりとりできる水準だ。

 「スーパー」陣営は、ドコモのほか欧州を中心とした25社が参加して昨冬に旗揚げした。日欧を中心に開発されたFOMAの技術を生かした通信方式を使う。

 標準採用される地域が広がれば、ドコモの海外進出の足がかりになる。利用者には海外出張や旅行でも使える利点が生まれる。ドコモの辻村清行常務執行役員は「利用できる国数でウルトラを圧倒する」という。

 一方の「ウルトラ」側はKDDIや北米中心の29社で、今年5月から新しい通信方式の規格などについて議論している。さらにKDDIは「固定との融合」を売り物に、固定通信網も持つ強みを生かして光ファイバーや無線LANなど、場所ごとに最適な通信手段を使い分けてコスト低減もねらう。

 渡辺文夫ワイヤレスブロードバンド開発部長は「携帯で話しながら家に戻ると、自動的にテレビ電話に切り替わるなど、通信方法を円滑に変える仕組みを作る」と強調する。

 日本は、01年にドコモが世界に先駆けてFOMAのサービスを始めるなど、第3世代への移行が最も進んだ国の一つ。8月末で全契約数8883万件のうち、第3世代が3676万件を占める。

 両陣営がシステムの高度化に力を入れる背景には、国内の携帯利用者数の伸びが鈍り、通話収入の増加にも陰りが出てきたことがある。高速・大容量通信の設備を背景に新しいサービスを打ち出せれば、利用拡大が期待できるというわけだ。

 「第4世代」と呼ばず、あえて「3G」の高速化と位置づけるのは、今の設備と互換性を強調するためだ。次世代の通信エリアを当初から広く確保し、旧世代の端末も使い続けることができれば、利用者が無理なく次世代に乗り換えられるだろう。そんな判断が両陣営にある。

 どちらも、07年には新しい携帯の基本仕様をまとめたいという。ただ、業界内には「問題はコスト。どんなに良い技術でも高ければ利用者は見向きもしない」といった冷めた視線もある。

■次世代携帯の勢力図(通信事業者)

 【スーパー陣営】          【ウルトラ陣営】

・日本・アジア           ・日本・アジア

NTTドコモ 中国移動(中)    KDDI イーアクセス

・北  米             SKテレコム(韓)など

シンギュラー・ワイヤレス(米)   ・北  米

・欧  州             ベライゾン・ワイヤレス(米)

ボーダフォン(英)         USセルラー(米)

オレンジ(仏) Tモバイル(独)  ベル・モビリティー(加)など

テレコムイタリア(伊)など

〔朝日新聞〕


■3Gって、ナニ?

 新しいケータイに関係する記事や解説を読んでいると、「3G」という単語をよく見かけます。「最新の3Gケータイ」「3Gケータイだと○○ができる」「これからは3G」といった表現が使われています。ケータイにおける「3G」とは「Third Generation(3rd Generation)」の略で、「第3世代」という意味を持ちます。今回はこの「3G」について、わかりやすく説明してみましょう。

 3Gケータイは、NTTドコモが2001年10月から「FOMA」、auが2002年4月から「CDMA2000 1X」、ボーダフォンが2002年12月から「Vodafone Global Standard」という名称で、それぞれサービスを開始しています。auは2003年11月から上位サービスの「CDMA1X WIN」を並行して提供し、ボーダフォンは昨年末から「Vodafone 3G」の名称でリニューアルした3Gサービスを提供しています。

 3Gは第三世代という意味ですから、当然、第一世代、第二世代が存在します。しかし、ケータイの世代は端末の大きさや形、サービス内容などを表わすものではなく、ケータイの根本を支える通信技術によって区別されています。

 第一世代は、当初の自動車電話から採用されてきた「アナログ方式」です。肩から提げる「ショルダーホン」やハンディサイズの端末が生まれ、ようやくケータイの原型ができた時代でした。しかし、都市部での契約者増に対応するため、1933年に「デジタル方式」でのサービスが開始されました。このデジタル方式が第二世代です。デジタル方式はアナログ方式に比べ、通話ノイズが少なく、バッテリー駆動時間が長くなるなどのメリットがありました。

 デジタル方式のケータイは補償金廃止や端末買い切り制度導入などに伴い、1995年頃から利用者が急速に増え始めました。iモードに代表されるパケット通信などの新しい通信方式も登場しましたが、再び周波数帯域(利用できる周波数の幅)に余裕が少なくなってきました。そこで、、新しい通信技術を採用した第三世代の「3Gケータイ」が提供されることになったわけです。2005年2月末現在、日本で利用されている携帯電話の内、約33%が3Gケータイになっています。

 では、従来のケータイと3Gケータイは、具体的に何が違うのでしょうか。簡単に言ってしまえば、従来よりも電波(周波数)を効率良く利用していることが挙げられます。その効率の良さによって、動画配信や音楽配信、テレビ電話、高速データ通信など、今までのケータイにはないサービスが実現されているのです。ケータイの電波は空中を飛び交っているため、無限に利用できるように考えられがちですが、利用できる周波数帯域は限られています。そのため、新しい通信技術は限られた周波数帯域で、より多くのユーザーが利用できることを目指して開発されています。3Gケータイはこうした世代的に新しい通信技術によって支えられているわけです。

 より多くの人が利用できるようになると、どんなメリットがあるのでしょうか。道路を例に考えてみるとわかりやすいでしょう。一定の幅の道路に同時に10台しかクルマが走れなければ、コストは10台で負担するしかありません。しかし、同時に走れるクルマの数が100台、1000台、1万台と増えれば、道路の利用効率が良くなり、コストを下げられます。つまり、ケータイなら、周波数の利用効率が良くなることで、通信コストが安くなるわけです。そのため、3Gケータイは従来のデジタル方式よりもパケット通信料が割安に設定されていますし、パケット通信を定額で利用できるプランも提供されているわけです。

 ケータイはアナログからデジタル、デジタルから3Gと、年を追うごとに世代交代が進んできましたが、実は周波数の利用効率向上こそがケータイの世代交代の正体なのです。

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各携帯電話事業者の3Gケータイが占める比率
NTTドコモ 21%
au 91%
Vodafone 4%
全体 33%
※2005年2月末現在、社団法人電気通信事業者協会調べ
※ツーカーは3Gケータイのサービスを提供していない

〔朝日新聞〕

■よみがえる「パーム」、北米でPDA市場拡大

 日米で携帯情報端末(PDA)市場が明暗を分けている。ともに低迷が続いていたが、米国では市場が回復の兆しを見せている。電子メールの送受信のほか、インターネットの閲覧や音声通話などに使える多機能機がビジネス需要を掘り起こした。一方、日本では市場縮小が続いている。

 米PDA大手、パームワンの2005年3─5月期は売上高、純利益ともに前年同期を上回った。パームワンはPDAブランド「パーム」で知られる。

 パームワンは5月、PDA向け基本ソフト(OS)大手、パームソースと共同保有してきたブランド名「パーム」の使用権を完全取得すると発表した。2003年、旧パームがOS事業を統括するパームソースを分社し、社名をパームワンに変更した。使用権の取得を受けて、パームワンは社名を元の「パーム」に戻すとみられ、名実共に「パーム」が復活する見通しだ。

 北米市場では無線電子メール端末「ブラックベリー」がヒットしたカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)がパームワンを抜いて米国市場でトップに立ったとみられる。フィンランドのノキアは北米PDA市場に再参入した。

 しかし、日本のPDA市場は縮み続けている。日本でのPDA市場縮小の背景にあるのは、携帯電話の多機能化だ。PDAの最大の売り物の一つだったスケジュール管理機能を備えた携帯電話が増えるにつれ、PDAの存在感は薄れた。携帯電話の多機能化はさらに進むとみられ、日本でPDAがすぐに復活するという兆しは見付けにくいのが現状だ。

[IT PLUS]


2005.09.01


■東芝、「世界最小」でビデオカメラ市場参入 ネット直販

 東芝はインターネット直販に限定した受注生産方式で10月にもビデオカメラ市場に参入する。同社が開発した世界最小の0.85型ハードディスク駆動装置(HDD)を用いてビデオカメラとしても世界最小サイズを実現する。これまでの同社製品と異なる、在庫を持たない販売方法によって価格を抑える狙いだ。

 同社は現在、ビデオカメラを販売していないが、今回発売する製品を次代の戦略製品と位置づけている。HDDの容量は4ギガバイトで、動画や500万画素の静止画を撮影できるようにする。

 HDDを使ったビデオカメラは、テープやDVDを記録媒体にする他のカメラよりも小型化が容易。現在は日本ビクターだけが発売している。ビクター製品は1型以上のHDDを使っており、東芝は0.85型を採用することでさらに小型化できる。

 競合機種の価格は現在、10万円程度だが、東芝はネット直販によってより安く設定する構えだ。パソコン世界最大手のデルがネット直販に限定した手法で低価格を実現しているが、日本の電機大手が主力製品をネット直販に限定して売るのは初めて。安売り競争が続く家電量販店の価格支配に対抗する狙いもあると見られる。

〔朝日新聞〕