DAILY SHORT COLUMNS - Daily Life -

 
2005.05.26
■暮らしWORLD:
650万帰宅難民に告ぐ

 「帰宅難民」をご存じだろうか。大地震が起きた時、都市部にいて帰宅できなくなる人たちのことだ。あまり想像したくはないが、心構えの有無は生死も左右しかねない。東京都心部の職場で大地震に遭遇したら……との設定で、帰宅難民のための“保存版注意事項”をまとめてみた。【太田阿利佐】

 ◇大地震でも急がず回れ

 ■冬の夕方だと

 東京都の「帰宅困難者10カ条」=別表=の最初は「あわてず騒がず状況確認」。これが大事なのは分かるが、具体的にどうしたらいいのか。

 まず大地震をイメージしてみよう。国の中央防災会議は2月、首都直下型地震について「都心西部直下地震でマグニチュード6・9、冬の午後6時、風速15メートルで発生」の場合、死者約1万3000人との被害想定を発表した。都内の約1300カ所で火災が起き、特に都心西部の環状6号線(山手通り)と同7号線の間で激しい。全壊は約20万棟。都心東部の荒川両岸の広い地域で発生する。つまり最も危険な地域は、都心部を囲むように発生する。

 交通機関がマヒし、歩いて自宅に帰れない「帰宅難民」は都内で約390万人、1都3県で約650万人。自宅まで10キロ以内の人は全員帰宅可能▽10〜20キロでは1キロ遠くなるごとに帰宅可能者1割減▽20キロ以上は全員が帰宅できない、として試算している。

 ■やたらに動かない

 「絶対に避けるべきは、あわててターミナル駅に殺到すること」。そう話すのは早稲田大学の「地域社会と危機管理研究所」所長、浦野正樹教授。「都市では駅前空間が狭く、最近は駅員も少ない。人が殺到してパニック事故の危険がある」という。都防災対策課の秋山栄理子・調整担当係長は「大震災発生からしばらくは行政は人命救助と消火が最優先。帰宅困難者への援助は限られる。むやみに動いて、大地震で助かった命を危険にさらすことだけは避けてほしい」と警告する。発想を「なんとしても帰宅を」から「やたらに動かない」に転換する必要がある。

 多くの人にとって、帰宅の緊急度は家族の安否による。自宅地域の被害が大きく、子供や要介護者がいれば「なんとか帰宅を」という判断もある。逆に被害が比較的小さく、家族も安全に避難している時、火災や倒壊の多発地域を通って帰宅する危険を冒す必要があるかどうか。停電していれば闇は深く、余震もある。冷静な判断が必要になる。

 ◇「日没まで」が判断基準

 ■まず安否確認

 従って、まずは家族の安否確認と震源地、震度などの状況確認だ。だが、電話はあてにできない。NTTの災害用伝言ダイヤル「171」、携帯電話のインターネット接続サービスの災害用伝言板は最も有効だ。音声指示に従って伝言を録音できる「171」は、計800万件の録音が可能。ただ、被災者が膨大なら、一つの電話番号ごとに録音できる件数は減少する。「『心配です。連絡して』などのあまり意味のない伝言を入れると、『秋山は○○にいて無事。△△に移動する』といった肝心の伝言が入らない可能性もあるので要注意」(秋山係長)だ。災害用伝言板は相手の携帯電話番号を入力して利用する。毎月1日に試験利用もできるので、練習したい(au、ツーカーは今夏から試験利用開始)。携帯電話やパソコンの電子メールもあるが、時間はかかりそうだ。

 ラジオなどで、震源地や幹線道路、橋の状況を確認することも心がけたい。「マスコミでも情報集約に1時間程度はかかる」(浦野教授)ので、この間、地図で職場から自宅へのルートをチェックする。「なるべく幹線道路を通り、行政やボランティアが活動していそうな避難所や公園に何度か立ち寄る。延焼などの被害状況は刻々変化するので、途中で情報収集するためです。距離的には大回りでも、被害が少ない地域を通った方が安全で、交通手段も確保しやすい」と浦野教授。

 都は、第一京浜や甲州街道など幹線道路16路線を「帰宅支援対象道路」に選定。近くの都立学校、東京武道館(足立区)、ガソリンスタンドを「帰宅支援ステーション」などとして水やトイレ、情報を提供する。企業や官庁の集中する千代田区も▽北の丸公園▽皇居東御苑▽皇居外苑▽日比谷公園の4カ所を「帰宅困難者支援場所」とする。いずれも休息はできるが、宿泊には不適なので要注意。

 さらに、時速2キロ程度で自宅までの所要時間を計算する。日没までに帰宅できればいいが、そうでなければ帰宅の緊急性とリスクの判断が必要。夜明けに出発する方が安全性は高い。

 ■救援活動支援も

 即帰宅が必要なら、身支度を整えたい。同じ方向の人と一緒に行動することも大事だ。けがをしたり道に迷っても助け合えるし、精神的な負担も違う。浦野教授は「できれば一度は職場から自宅まで、災害時の様子を想像しながら歩いてみる。事前に職場に用意すべきものも分かるはず」と話す。夜間人口約4万人、昼間人口90万人以上の千代田区防災課の幸田和裕主査は「区内の企業で食糧備蓄をしているのは約3分の1。区の備蓄食糧は区民優先で、在勤者全員にはいきわたらないのでしっかり準備してほしい」と語る。

 浦野教授は「被災地に救援が来るまでには時間がかかる。健康な成人で帰宅の必要性も低いなら、貴重なマンパワーともいえる。ボランティア拠点になる場所は情報も支援も集まり、より安全だ。いざという時、地域ボランティアと企業が助け合えるよう、普段から連携を」と呼びかける。

 災害時の状況は千差万別。「これが絶対」という方法はないが、その時どうするかを考えておけば、おのずと必要な備えも見えてくる。

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 【チェックポイント例】

(1)家族の安否確認

・NTT災害用伝言ダイヤル(171)

・携帯電話の災害用伝言板

・電子メール

(2)ラジオ、テレビで情報収集

(3)地図で自宅までのルート確認

・できるだけ幹線道路を利用

・情報収集できる場所に立ち寄る

・時速2キロで所要時間を概算

・日没までに着けるかチェック

以上を考慮して帰宅の緊急度を判断、即帰宅が必要なら

(4)身支度をする

歩きやすい靴、防寒具・雨具、ラジオ、懐中電灯、地図、飲料水・アメなどの簡易食料

(5)同方向に帰る人と一緒に行動する

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 ◇帰宅困難者10カ条=東京都

・あわてず騒がず、状況確認

・つくっておこう帰宅地図

・机の中にチョコやキャラメル(簡易食料)

・事前に家族で話し合い(連絡場所や集合場所)

・安否確認、ボイスメールや遠くの親せき

・歩いて帰る訓練を

・季節に応じた冷暖準備(カッパ、携帯カイロ、タオルなど)

・声をかけ合い、助け合おう

・携帯ラジオをポケットに

・ロッカーあけたらスニーカー(防災グッズ)

〔毎日新聞〕


2003.05.23

■暗くなる地球、太陽光反射率下がる…NASA観測

 【ワシントン=笹沢教一】地球が毎年わずかながら暗くなっていることが、米航空宇宙局(NASA)の衛星観測でわかった。

 地球温暖化による雪氷の減少などで地球の“白さ”が失われ、太陽光の反射率が減少したらしい。より多くの太陽エネルギーが地球に吸収されることで、温暖化を加速する恐れもあるという。

 NASAは、地球観測衛星テラに搭載された雲地球放射エネルギー観測装置を使った観測で、2000〜04年の4年間で約0・15%地球の太陽光反射率が下がっていることを突き止めた。

 この数字は、地表全体に1平方メートルあたり約0・5ワット相当のエネルギーが余分に吸収されたことを意味するという。

 地球は過去30年間、年平均約30%の反射率で安定。大気中の二酸化炭素濃度が現在より倍増した場合、温暖化に伴う気候変動で雪氷などが失われ、1%ほど反射率が下がると考えられている。

〔読売新聞〕


2005.05.19

■「生まれ変わってもまた女性に」日本、東アジアで最高

 「生まれ変わっても、また女性に」という女性の割合は、日本では約7割で最も高い――。「人生をやり直せるとしたら、男と女のどちらに生まれていた方がよかったか」との質問を、日本、中国、韓国、台湾、香港の男女にしたところ、そんな結果が出た。総合地球環境学研究所(京都市)の鄭躍軍(ジェン・ユエジュン)助教授(社会調査)が7月にスウェーデンである国際学会で発表する。

 統計数理研究所(東京)とともに02年から03年にかけて、5カ国・地域で実施した価値観の比較調査(回答数7629人)で尋ねた。

 女性で「女に」が「男に」を上回ったのは日本、香港、韓国で、その割合は日本が最も高かった。中国、台湾は「女に」と「男に」がほぼ同じ。

 男性では「男に」がいずれも多数を占めた。日本、香港、韓国は約9割と高く、中国と台湾は3分の2前後だった。

 統計数理研究所が53年から5年ごとに実施している日本人の国民性調査によると、「女に」という女性は63年までは少数派だったが68年に逆転。以後は年々増えている。

 鄭さんは「儒教思想の影響もあって男性優位の傾向が強い東アジアのなかで、日本がいち早く近代化したことの反映ではないか」と説明する。

 《永瀬伸子・お茶の水女子大助教授(労働経済学)の話》

 日本では、男性に比べて稼ぎが少なく家庭中心の生活でも、生活水準の向上などでそれなりの自由と豊かさが保障されると感じる女性が増えたことを示しているのではないか。

〔朝日新聞〕


■平均気温2〜3度上昇、雪半減…100年後の気候予測

 気象庁は19日、スーパーコンピューターで算出した約100年後の日本付近の気候変化予測を発表した。地球温暖化の影響を受け、日本の年平均気温は2〜3度上昇し、降水量も最大で20%程度の増加が見込まれるという。

 算出は、温室効果ガスの排出量と濃度を予測した国際的なシナリオを利用。これに日本の地形情報などを加えて割り出した。

 気象庁によると、年間の平均気温が全国的に上昇し、東京で現在の鹿児島並みの気温になるほか、北日本では年間100〜150日ほどある冬日(最低気温が0度未満の日)が100年後には、50日程度少なくなるという。また、北陸地方では、降雪量が現在の50%程度まで減少し、雪国の景色も変わりそうだ。

 一方、気温の上昇に伴って降水量の増加も見込まれ、7月には、東北南部から西日本で増えて、大雨に見舞われやすくなるという。

〔産経新聞〕


2005.05.16

■男女平等:
北欧上位、日本は38位 スイス民間機関調査

 【ジュネーブ大木俊治】世界の政財界トップが集まる「ダボス会議」の主催者として知られるスイスの民間研究機関「世界経済フォーラム」は16日、主要58カ国の男女格差の度合いを指数化してランキングした報告書を発表した。最も格差が少なく、男女平等社会に近いと判定されたのはスウェーデンで、北欧諸国が上位を占めた。日本は38位だった。

 報告は、(1)女性の就業率など経済への参加度(2)産休制度の充実や、専門職に占める女性の比率など雇用機会の均等性(3)議会や政府など政治決定機関に女性が占める比率(4)教育機会の均等性(5)女性の健康への配慮−−の5点を重視。国際機関のデータや独自の聞き取り調査をもとに「完全な男女平等社会」を7点満点として各国の得点をはじき出した。

 その結果、スウェーデンが5.53と最高点で、次いでノルウェー、アイスランド、デンマーク、フィンランドの順。他は英国8位、ドイツ9位など西欧諸国の得点が高く、米国17位、ロシア31位、中国33位など。

 日本は、女性の健康面で3位、教育機会や経済参加も平均的だったが、雇用機会や政治決定での得点が低く、総合得点は3.75と平均(3.98)を下回った。

〔毎日新聞〕


2005.05.15

■全米で食料の4〜5割がゴミに、損失1千億ドル

 アメリカで出回る食料のうち収穫から流通、食卓を通じて40〜50%が無駄に捨てられ、経済損失は約1000億ドル(10兆7000億円)に及ぶ。アリゾナ大学応用人類学研究所のティモシー・ジョーンズ博士がこんな推計結果を公表した。

 農務省プロジェクトとして、農場での収穫から家庭やレストランでの消費までの各段階での実測を基本に、失われる食料の量を算出した。

 たとえば、4人家族の一般家庭では1日あたり約580グラムの食料が捨てられていた。賞味期限切れのパック、肉、缶詰、乳製品などのゴミの中身を調べると、野菜が27%、穀類が20%、フルーツが16%、肉が11%を占めた。ゴミになる食料は1年に212キロ、約590ドル。全米の家庭に換算すると、約430億5000万ドル(4兆6000億円)となった。

 流通段階ではコンビニエンスストアで食料の26.33%、ファストフード店では9.55%、一般レストランで3.11%、スーパーで0.76%が捨てられていた。農場ではオレンジの29%が傷みなどから出荷までに捨てられるという。ブロッコリーの19%、ニンジンの3%がゴミになっていた。

 ジョーンズ博士は「流通から消費までの各段階で食べ物がゴミになるのを防ぐ計画を立て、食べ物の大切さを教育する必要がある」と話している。

    ◇

 農水省が1月に発表した04年食品ロス統計調査によると、国内の食堂とレストランで食事の3.3%が食べ残しになっている。家庭を含めた国内全体では約11兆円分の食べ残しがあるとの政府試算もある。

〔朝日新聞〕


2005.05.13

■37%が「近所で毎日銃撃」 国連がイラク生活調査

 安全な水が常に手に入る家庭は61%、安定した電力供給を受けられる家は15%、近所で毎日銃撃がある家は37%−。国連開発計画(UNDP)とイラク計画省が合同で行った同国全18州の生活状況調査の報告書が12日公表された。

 調査は、全国計2万2000世帯を対象に昨年3−5月と8月に実施された。その後も目立った状況の改善はなく、同国の厳しい生活や治安の悪さがあらためて示された。

 毎日銃撃があると答えた割合が最も多かったのはアンバル州で約60%。武装勢力が拠点を置き、米軍による大規模な制圧作戦があったファルージャや、英国系警備会社の斎藤昭彦さん(44)がイスラム過激派に拘束されたとみられるヒートなどが州内にある。

 クルド人自治区を構成する北部の3州はともに1%、陸上自衛隊が活動する南部のムサンナ州では13%で、アンバル州の治安の悪さが目立つ。首都があるバグダッド州は59%だった。

 安全な水が安定して供給される家庭の割合が最低だったのは、陸自が給水活動を実施しているムサンナ州で42%。

 失業率はイラク全土で18%、ムサンナ州は全国で最も高く33%だった。しかし同日、記者会見したサレハ計画相は、不完全雇用状態の人を入れると、失業率は「50%を超える」と話した。

(共同)

〔産経新聞〕


■干ばつ・洪水、水の世紀末 温暖化2.7度、大河流量激変の予測

 ユーフラテス川の水量は4割減って干ばつの恐れがある一方、ガンジス川は15%増えて洪水の危険が高まる――。地球温暖化の影響を探る日本の気象研究者らが、世界の24河川の今世紀末の流量予測をまとめた。「災害への懸念だけでなく、水不足による紛争の恐れも生じる。長期的な視点に立って水の有効利用を考える必要がある」と研究者は訴えている。(大久保泰)

 科学技術振興機構の野原大輔研究員や気象庁気象研究所、東大生産技術研究所のグループが、2081年〜2100年の予想気温、予想降水量などから予測した。15日から東京で開かれる日本気象学会で発表する。

 野原研究員によると、世界各国の研究機関がまとめた最新の15の予測モデルを活用した。その結果、世界全体の平均気温は今より2・7度(陸上だけでは3・7度)上昇。降水量は北極に近い高緯度や、インドから東アジアにかけて1日当たり0・1ミリ〜0・2ミリ増え、地中海周辺から中近東で0・1ミリ〜0・5ミリ減ることがわかった。

 そのうえで、どこに降った雨がどの川に流れ込むかを約100キロ四方ごとに予想する「河川流路網」をつくり、それぞれの川の流量を推計した。

 全体的な傾向としては、北極周辺では雪が積もらなくなったり、氷が解けたりするため、気温の上昇がほかの地域より大きく、今まで以上に雨が降りやすくなる。赤道のすぐ北側で上昇した空気は通常、中緯度の北緯30度付近で乾燥した下降気流となるが、温暖化でこの傾向がより顕著になり、ユーフラテス川やドナウ川の流域では雨量が少なくなるという。

 また、もともと降水量が多い東南アジアの河川では、地面に染み込まなくなった雨がそのまま河川に流入しやすくなるため、流量が一気に増える恐れがある。逆に降水量が少ない中近東では乾燥化が進むため、降った雨が地中に染み込んでますます川に流れ込みにくくなることもわかった。

 個別の河川では、ユーフラテス川が41%減、ドナウ川も23%少なくなる。増加するのは、アラスカのユーコン川23%、ガンジス川15%など。

 ガンジス川では年間を通じて最も雨量が多い時期にさらに流量が増えるため、洪水への危機が高まり、流量が減る地域では干ばつによる農作物への影響が懸念されている。

 20世紀が「石油を巡る戦争」の時代だったのに対し、21世紀には「水を巡る戦争」が懸念されるという指摘がある。野原研究員は「ユーフラテス川やメコン川流域などの人口増加地域では、水を巡る争いが心配だ。少ない水資源の活用を考える必要がある」と話す。

 日本の降水量は増加と減少の境界付近で、「どちらになるか微妙」といい、日本の河川は予測対象にしていない。

〔朝日新聞〕


2005.05.01


■「地球はスモッグに覆われて…」 露宇宙飛行士が警告

 【モスクワ=内藤泰朗】「地球はスモッグに覆われ、写真撮影するのも難しかった」−。国際宇宙ステーション(ISS)からこのほど地球に帰還したロシアのシャリポフ宇宙飛行士は27日、同じく帰還した米国とイタリアの宇宙飛行士との共同記者会見で、地球環境保全の緊急性を訴えた。

 モスクワ郊外の宇宙施設「星の街」で会見したシャリポフ氏は「自然を汚す工場の煙で覆われた地球を見るのは悲しいことだ」と述べた。工場からのスモッグが特に深刻なのが東アジアで、この地域は「写真撮影することすら困難なほどのスモッグで覆われていた」という。

 同氏は「宇宙に行って初めて私たちの地球がいかに壊れやすいものか理解できた。私たちは一刻も早く環境保護に努めなければならない」と警鐘を鳴らした。

 ISSで活動していた3人の宇宙飛行士たちは今月25日未明、ロシアの宇宙船ソユーズで無事カザフスタンに着陸した。

 米航空宇宙局(NASA)が来月、打ち上げ再開を目指す米スペースシャトル「ディスカバリー」には、日本人宇宙飛行士の野口聡一さん(40)も搭乗し、ISSに向かうことになる。

〔産経新聞〕


■「数分遅れで怒る通勤客」日本の“特殊性”海外も関心

 主要先進国で百人前後の死者が出た鉄道事故としては、一九九八(平成十)年に起きたドイツの高速列車「ICE」の脱線事故以来となった兵庫県尼崎市のJR脱線事故。国内のみならず世界的に大きく伝えられ、アジアでの事故に関する報道としては異例の「大ニュース」となっている。他国に比べ鉄道への依存度が高く、定時運行が当然という日本の“特殊性”への関心もうかがえ、JR西日本に対する批判が高まっていることを紹介する例も多い。

 英デーリー・テレグラフ紙は、日本の鉄道会社について「定時運行、安全、従業員の質、技術すべてで、英国では想像不可能な高いレベルを保っている」と紹介。しかしその一方で、このような状態が維持されたことで「通勤客は、ほんの数分の遅れが出ただけで激しく怒ってしまう欠点がある」と、このような状態に慣れている乗客側の要求水準も極めて高いことを指摘している。

 このため、「鉄道会社側は従業員に定時運行の激しい圧力をかける」状況が生じていることを暗に批判する形にもなっている。

 また、二十八日付の米クリスチャンサイエンス・モニター紙は、「世界で最も安全な鉄道システムの一つを持っているとの評判が揺さぶられていることが、日本で起きている激しい衝撃の大きな要因になっている」と尼崎発の記事で指摘し、今回の事故が日本人の自信や鉄道輸送への信頼に極めて大きな影響を与えたとの見方を示した。

 同紙は、日本では「例えば赤信号で三十秒停止しただけでもおわびの車内放送が流される」など、他国では考えられない水準の正確さが当然になっていることを紹介。欧州の中でも鉄道が発達しているドイツに比べても、日本の鉄道の年間旅客輸送量は約十倍にのぼると伝え、「日本ほど鉄道に乗ることが日常の一部になっている国はない」ことが、事故の衝撃をより大きくしていると分析している。

 日本の鉄道に関しては、各国メディアとも「世界で最も大規模、かつ洗練されている例の一つ」(米ワシントン・ポスト紙)、「世界で最も信頼できる」(独フランクフルター・アルゲマイネ紙)など、高く評価している。それだけに、今回のような事故が起こったことが、他国の場合よりも驚きをもって受け止められている形だ。

 ただ、各メディアの報道では、「電車は福知山発」「女性専用車両が二両あった」など、細部で事実と異なるものが少なくなく、JR西日本や警察・消防当局などの外国メディアに対する態勢が十分ではないこともうかがわせている。

〔産経新聞〕


■JR脱線事故 ニューヨーク・タイムズ紙が論評


 【ニューヨーク=長戸雅子】兵庫県尼崎市のJR脱線事故は米メディアでも連日報じられているが、27日付のニューヨーク・タイムズ紙は「時間への強迫観念が原因」との見出しをつけた記事を掲載、時刻表通りに運行しなければならないとする強迫観念が事故の背景にあり、時間の正確性や効率性をあまりに重視する日本社会に警鐘を鳴らす意見が出てきていると分析した。

 記事は「世界のどの国でも90秒の遅れは時間通りとみなされるが、日本では数分間隔で運行される電車に頼る通勤客に影響がでることになる」との書き出しで、定刻に固執する日本の“特異性”を指摘した。

 運転士がこの90秒の遅延を取り戻すためスピードを上げていた可能性があるとし、列車の遅れは英国では5分、ニューヨークでは6分以上の場合を指すのに、日本では一分の遅れでも車掌がわびると紹介した。

 そのうえで「安全性と(時間の)正確性では日本の交通機関が世界で一番だが、日本人はもう少しリラックスし、2、3分の遅れは問題ではないと思うようにしたほうがいい」との交通問題専門家の話や「事故には日本人全体に責任がある。日本社会には余裕がなく、それが運転士が九十秒の遅れを埋め合わせようとした原因だ」との地元住民の意見を紹介している。

〔産経新聞〕