DAILY SHORT COLUMNS - Daily Business -

 
2002.06.29 「40年間ほとんど楽しいことはなかった・・・」Vol.18

毎晩こんな馬鹿げた金額を支払って食事をしているとまでは思いませんが、少なくとも彼らにとっては、ごく日常的な何ら特別な出来事ではないのでしょう。


この秘書室長の会社の実情も、特筆に価する凡人の想像の外にあるものです。

グループの関連企業を併せると優に100社を上回るコングロマリットの一角に位置する広く世間に名の通った会社なのですが、ここの社長はコングロマリットの総帥の懐刀として長く仕えた人物です。

この会社は、事実上はこのコングロマリットを中枢で支えるブレイン達はもちろんのこと、提携先や得意先などの子息令嬢達を就職させるために設立されたといっても過言ではありません。

もちろん社員すべてという訳ではなく、末端にはそんな事実は知らないまま、通常の就職活動を通して新卒で入社してくる人達もいますが、彼らは決して社内でのポジションをあげていく機会には恵まれませんし、そんな実情を知ることになった優秀な人材のほとんどは、数年で見切りをつけて離職し独立したり転職をしていくことになります。(続く)


2002.06.17

「40年間ほとんど楽しいことはなかった・・・」Vol.17

デザートは、何十種類ものケーキの中から各自がいくつか好みのものを選んで少量ずつ盛り合わせたものに、さらにフルーツやシャーベットをあしらった大皿です。甘さを控えた上品な味わいでしたが、さすがに私は食べきれず、ダブルのエスプレッソをおかわりしてしまいました。

そんなこんなで食事が終わり、場所を移すことになるのですが、レストランを出る段になってさりげなく会社に回すように指示しながらサインをするホストの秘書室長の手元の伝票を覗き込むと、何と請求金額は140万円弱にも及んでいたのです。

その約半分は2本の高価なワインであるとはいえども、たった一度の食事にこの代金・・・、ましてやこんなところを日常的に利用しているこの二人、さらにはホールを貸し切ってのあれだけの人数による誕生パーティーの総予算は一体・・・、などと考え始めると、まさに本当に開いた口がふさがらないまま顎をはずしてしまいそうな気分になってしまいました。(続く)


2002.06.13

「40年間ほとんど楽しいことはなかった・・・」Vol.16

一体どれだけの種類の料理が運ばれてきたのかももう判らなくなってきた頃、まあそれでもまだお腹にはやや余裕を感じるほどだったのですが、突然女史が「私はやっぱりお茶漬けかな・・・???」とつぶやくようにのたまうと、すかさずホストの秘書室長は「俺は雲丹丼!」と即座に返します。またジョークかと思いきや、いやいやそれまでの経緯からすれば何でもありだろうなどと考えていると、「お二人は何をお召し上がりになりますか」とまた真顔の支配人に尋ねられてしまい、私はアシスタントと顔を見合わせながら何も頭に浮かばなかったので、女史と同じものでとお茶漬けをオーダーしました。

そのお茶漬けたるや、何とも幸せで一杯の気分にさせられる香り高く奥深い出し汁、鮭や昆布や干物のような小魚をはじめ何種類もの具が美しく盛り付けられ、そこにまたあられのようなものと海苔と三つ葉があしらわれていて、その味たるや目の覚めるほどの、お茶漬けも極めればここまで来るのかと感慨深い気持ちになってしまうほど素晴らしいものでした。(続く)


2002.06.11

「40年間ほとんど楽しいことはなかった・・・」Vol.15

また飲み物も特筆に価するものでした。

食前酒は各自が好みのものをということで、ウォッカやシェリーやシャンパンベースのカクテルをそれぞれオーダーしたのですが、食中酒には支配人のリコメンデーションにより、それぞれ料理に合わせてと赤と白の両方のワインをオーダーしたのです。

それがまたそのレストランのスタッフがわざわざたったその一本のみの買い付けのためにイタリアまで飛んでハンドキャリーをしたばかりとの赤ワインで、ラベルは普段私も時々愛飲するポピュラーなものなのですが、また淡々とした支配人のさらなる説明の内容は忘れてしまいました。

白ワインもその時期に訪れる特別なゲストのために、もう何年も前からその時期の開栓を想定してワインセラーで熟成させてきたという、これはもう見たことも聞いたこともない珍しいラベルでした。

そのいずれのワインも、確かに香りといいカラーといい、そしてもちろん味といい素晴らしいものではありましたが、何より私が驚いてしまったのは、後でサインをするホストの手元をこっそりと盗み見てしまった、何と赤ワインの50万円弱、白ワインが35万円強という請求金額でした。(続く)