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2005.08.31 ■団塊世代に照準…都会飛び出し起業目指せ 創業資金支給へ

 厚生労働省は31日、大都市を飛び出して地方での起業を希望するサラリーマンなどを後押しするため、創業資金を最大300万円まで支給する制度を新設する方針を明らかにした。団塊の世代に照準を合わせた新政策で、対象地域は20道府県47地域。同日提出の2006年度予算概算要求に、3億7000万円の助成金を盛り込んだ。

 主なターゲットは2007年から300万人近くが定年を迎える団塊の世代。この世代には定年後、地方での生活を希望している人が少なくない。長年企業内で培った技術を生かして移住先で創業してくれれば、厳しい雇用情勢が続く地方にとってもプラスになると青写真を描いている。

 助成金の支給を受けるには(1)政令指定都市か東京23区に5年以上在住・在勤している(2)雇用保険の被保険者期間が5年以上ある(3)地方移住後1年以内に創業し、事業開始後1年以内に常用労働者を雇用する―といった条件を満たす必要がある。

 起業のための移住先は、厚労省が雇用環境の特に厳しい地域として認定している「雇用機会増大促進地域」。北海道の旧産炭地や沖縄の離島なども含め、全国で20道府県47地域としている。

 創業支援策としては、法人設立費用のほか設備費、知識習得のための講習費、コンサルティング費など300万円を上限に支給する。

 厚労省は「地方で第二の人生を送ろうと考えている都会の会社勤めの人たちが、地方経済活性化の起爆剤になってくれれば」(雇用開発課)と期待している。(共同)

〔産経新聞〕


2005.08.19


■カーブアウト、大企業動く 埋もれた技術・人材、社外で事業

 大企業で埋もれた技術や人材を社外の独立した組織に出して事業化を図る「カーブアウト」という新手法が注目されている。支援ファンドが相次いで創設され、ソニーの元技術者や、日立製作所などの電機メーカーのほか、大手商社も参入。専門家の起業に向く有限責任事業組合(LLP)制度が8月から始まったのも追い風だ。(佐野哲夫、後藤絵里)

●「しがらみ」外れ、増す自由度 支援ファンド、次々

 大企業が自分で事業化しにくい特許や先端研究は少なくない。これを開発者らと一緒にいったん社外に出し、ファンドなど第三者の出資も得て事業に育てるのがカーブアウトだ。

 研究者が大企業を飛び出して独立するスピンアウトは、米国などと違って失敗後の再出発が厳しく、数が増えない。一方、社内ベンチャーは親企業の影響力が強く、自由に活動できない。カーブアウトは親企業の出資を少なくして、自由に事業化を図る「第三の道」として期待されている。

 カーブアウトのコンサルティング会社、テックゲートインベストメント(東京)は10月にも専門のファンドを創設する。日本政策投資銀行や大手金融機関、生損保などが出資し、電機や建設などに3年間で10件、50億円を投資する。受け皿組織は、起業した技術者に対して貢献に応じた利益配分ができるLLPが有力だ。

 同社の土居勝利社長はソニーの技術戦略の元統括課長。「しがらみなどで日の目を見ない大企業の技術を開花させるにはカーブアウトが最適。成功したら、親会社が事業を買い戻せばいい」

 教訓は、米アップルコンピュータのヒット商品、ネット配信音楽の携帯再生機「iPod」だ。ソニーが技術開発で先行していた分野だが、既存のCDやMD事業を圧迫するため商品化が遅れた。「親企業から事業を切り離しておけば、親の都合にかかわらず製品化できただろう」(アナリスト)というわけだ。

 日立製作所グループも5月、中小企業基盤整備機構と20億円ずつ出資してファンドを設立。日立グループの特許は国内トップクラスの7万3千件。だが、日立だけでは活用のめどの立たない技術も少なくない。これらを中小企業と事業化する。成功すれば、大企業と中小企業が開発主導で結びつく新たな産業組織作りにもなると期待される。

 三菱商事は4月、政投銀と総額150億円の「イノベーションカーブアウトファンド」を作った。電子産業やハイテクメーカーなどに5年間で3億〜30億円を投資する。運営会社の吉澤正充社長(三菱商事出身)は「技術者の起業には、経営や市場開拓など専門外の面で支援が必要」といい、商社の販路や市場分析力などを提供する。

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◆キーワード

<カーブアウト(carve out)> 「切り出す」という意味の英語。技術者などが大企業から独立することはスピンオフ(spin off)、スピンアウト(spin out)といわれてきたが、古巣の会社とは縁が切れる例が多い。カーブアウトは、企業が戦略的に技術や開発者などを別組織に出す点が異なる。親企業は支援するものの出資は少額に抑え、ファンドなど第三者に多く出資してもらい、合理的な経営を図る。成功したら親会社が技術を買い取ったり、事業会社化したりする。

〔朝日新聞〕